スポーツ記者はさまざまな競技を間近に見られる。感動を伝えたいから、試合後の取材は欠かせない。だが、記者が思い思いの場所で選手に話を聞くと、大会運営に迷惑をかけることがある◆同じことを何度も聞かれる選手も疲れるはず。だから、取材エリアや記者会見が設定される。甲子園球場で、引き上げてきたチームを記者が取り囲む姿をテレビで見た人も多いだろう。あの取材エリアはその一つ。しかも、時間は10分程度だ◆普段から信頼関係ができていれば少ないやりとりで済むこともあるが、全ての競技でそんな関係をつくるのは難しい。急ぐあまり、失礼な質問をぶつけた時もあったのではないかと反省している◆女子テニスの大坂なおみ選手が全仏オープンでの記者会見を拒否し、大会を棄権した。優勝した2018年の全米オープン以降、うつに苦しんでいたことを明らかにし、しばらくコートを離れるとも。あのパワフルなテニスの裏で、人知れぬ苦しみを背負っていた。この数日間の言動に合点がいった。世の中、そんなに強い人ばかりではないし、心を鍛えるのはとても難しい◆大坂選手が問題提起した会見拒否にどう対処するか。筆者もメディア業界にいるだけに悩ましい問題だが、最善の方法を考えたい。間近ではなくても、彼女のプレーが見られなくなるのは寂しい。(義)

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