政府は、東京、大阪など9都道府県に発令している新型コロナウイルスの緊急事態宣言を6月20日まで延長すると決めた。うち4都府県は2度目の延長で、期間は約2カ月に及ぶことになった。

 苦境の北海道、沖縄県をはじめ全国に感染は拡大している。大型連休中に人流を抑え切れなかったことで首都圏や関西から地方に広がった。加えて、一気に主流化した英国由来の変異ウイルスの感染力に十分対処できず医療提供体制が逼迫(ひっぱく)したことが「第4波」長期化を招いたとみるべきだ。

 元旦から6月20日までの171日間で宣言が出ていないのは40日間のみとなる。「必ず近い将来この局面を乗り越える」と公言した菅義偉首相は重い政治責任を負う。

 今後の焦点は英国株に置き換わり始めた一層強力なインド株だ。延長期間に今の感染状況を下火にするとともに、インド株対策を急ぎ次への備えを固めた上での解除にしなければ、夏の「第5波」が現実化しかねない。

 厚生労働省の専門家組織によると、宣言対象の中には新規感染者が横ばいや減少傾向の地域もあるが、大阪、兵庫などは医療提供体制が非常に厳しい。北海道、沖縄は新規感染者が増え続け、東京も人出増加が続けばリバウンドの可能性がある。

 東京などは酒類提供停止といった強力な対策を取っても明確な感染者減少とならない。従来より感染者減少ペースが遅いのが今の特徴で、さらに若年層の重症化リスクが高まり重症者が1400人超と過去最多を記録したことにも留意すべきだ。

 これらは英国株が引き起こした可能性が高い。国立感染症研究所によれば、英国株の感染力は従来株より5~7割高い。そしてインド株は英国株よりさらに5割ほど感染力が強い恐れがある。「これまでとフェーズが違う」という専門家の警鐘を真剣に受け止めたい。

 インド株の国内での感染者累計は24日までに7都府県で29人で、1週間で3倍以上に増えた。検疫で報告された感染者も含めれば計189人。感染者が最も多かったのが海外からの玄関口に当たる千葉県、大阪府であることを見れば水際対策強化が早急に求められる。

 さらに厚労省が「冬の最大感染者数の2倍」を目標に自治体へ拡充を求めたコロナ病床は関西、北海道などで想定超えの逼迫が起きた。インド株の脅威に備えるにはさらに上積みが必要となる。

 宣言対象地域では、酒類やカラオケ設備を提供する飲食店に休業が引き続き要請される。一方、百貨店などに対し、政府が求める午後8時までの営業時間短縮よりも強い独自の休業要請をしてきた東京、大阪は延長後に平日の時短営業を認める。

 大勢が集まる場所を無くせば人出が減り、マスクを外す飲食の機会も減るとの狙いの休業要請だった。だが宣言長期化で、経済活動の強い制限を続ければ、経営行き詰まりや労働者の困窮が広がりかねないとの判断だ。

 ワクチンが切り札としても、全高齢者への接種完了は早くて7月末。1億人超の全対象者に打ち終えるには時間がかかる。それまでは従来の人流抑制、感染防止策を愚直に続けるべきだ。政府は中小企業への実質無利子・無担保融資や生活困窮者対象の特例貸付制度の延長を決め、困窮世帯へ最大30万円支給を7月に始める。弱者をしっかり支えながら乗り切りたい。(古口健二)

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