朝か夜、その日の気分で近くの川沿いを歩いている。ここ数日は迷わず夜を選ぶようになった。天候によって姿を見せる蛍が目当て。川面に目を向けると、数匹の蛍が明滅を繰り返し、散歩の楽しみが倍増する◆〈夏は夜。月のころはさらなり。やみもなほ、蛍の多く飛びちがいたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし〉(枕草子)。平安の女流作家と同じではないかと独りごちて、夜をさまよっている◆清少納言の時代から約千年。現代社会に生きていると、昔の人よりも優れているような錯覚に陥るが、感性は鈍ってこそすれ、勝っているわけではない。まあ、人間はそう変わらないと思えば面白くもある◆新型コロナ感染の最初の波を越えた頃だろう。歌人の俵万智さんは〈第二波の予感の中に暮らせどもサーフボードを持たぬ人類〉と詠んだ。今は第4波のただ中にある。緊急事態宣言は延長が決まり、佐賀県も「医療機関を守る非常警戒措置」を延ばした。ワクチン接種が収束への光なのだが、日本ではまだ蛍のように淡い点滅である◆人間の感性は変わらずとも、科学技術は間違いなく進歩している。開発されたワクチンと、接種を加速する態勢づくり。この二つがセットになってこそサーフボードは役割を果たす。人類の進歩に光あれ。(知)

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