政府は今夏の電力需給について、北海道と沖縄を除き全国的に、ここ数年で最も厳しくなるとの見通しを発表した。火力発電所の休廃止により安定した電力の供給力が低下しているためで、対策として発電事業者に燃料の十分な確保などを求める一方、一般家庭には無理のない範囲での省エネへの協力を呼び掛けた。

 経済産業省によると今冬は、東京電力管内を中心にさらなる電力不足が見込まれるという。

 停電に陥るような深刻な事態を避けるため、需要面で企業と一般家庭の協力はもちろんだが、政府と電力事業者は供給面の対策に万全を期してもらいたい。

 電力供給の余裕度を示す予備率について経産省は、猛暑を前提とすると北海道・沖縄を除いて7月に3・7%、8月に3・8%との見通しを示した。安定供給に最低必要な3%は確保できるものの、近年で「最も厳しい状況」(梶山弘志経産相)という。

 このため冷房需要が急増する夏場を前に、対策を早期に呼び掛けた。

 まず供給面では、故障で発電が止まらないよう保安管理の徹底と、燃料となる液化天然ガス(LNG)の十分な確保を発電事業者へ要請した。

 LNG不足は、昨年末から今年1月にかけての電力逼迫(ひっぱく)の一因だった。政府の要請はその経緯を踏まえたものであり、事業者は同じ事態の回避へ確実に手を打つべきだ。

 需要面では、東日本大震災後のような節電要請には踏み込まないものの、産業界に対して電力不足の緊急時に「柔軟な対応」への協力を求めた。店舗の営業短縮などを想定しているという。また省エネが例年以上に重要な点を企業、家庭の双方へ呼び掛けるという。

 一般家庭の省電力で気を付けたいのが、冷房温度を高めに設定したり、我慢してエアコンを使わなかったりする問題だ。高齢者などで熱中症の恐れがあり、趣旨を理解した適切な冷房の使用を心掛けたい。

 電力切迫の要因に梶山経産相が挙げた火力発電所の休廃止は、採算の悪化や地球温暖化対策の要請で近年急増している。施設の老朽化に加え石炭火力では二酸化炭素(CO2)の排出が多いためで、2021年度夏は前年度より680万キロワットも減少する見通しという。

 火力は発電量を機動的に調節できる利点があり、その減少が供給力の不安定化につながっているとの指摘は理解できる。再生可能エネルギーの柱である太陽光発電は、雨天時や夜間の供給力に弱点があるためだ。

 しかし脱炭素は世界の潮流であり、需給調整の困難さが火力増強や、まして原発再稼働の議論に直線的に結び付くものではないだろう。

 経産省は見直し中のエネルギー基本計画で30年度の電源構成について、太陽光や風力の再生エネを30%台後半へ増やし、火力は縮小の方向だ。火力減への当面の対応では、過度に休廃止が進まないようペース管理の仕組みなどを検討するという。再生エネの拡充は時代の要請であり、それを前提に電力需給の安定を図っていかざるを得まい。

 国民も電力確保や省エネの在り方について、政府や電力会社任せにするのでなく、自ら考えるようにしたい。電気は「安くて、使いたいだけ使えるのが望ましい」との意識は、変革を迫られていると気付くべきだろう。(共同通信・高橋潤)

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