定例記者会見で、九州新幹線長崎ルートに関する質問などに答えた山口祥義知事=26日午前、佐賀県庁

 九州新幹線長崎ルート新鳥栖-武雄温泉を巡り、フル規格での整備に向けて「検討の方向性」をまとめた26日の与党検討委員会。佐賀県の山口祥義知事は定例記者会見で与党への不満を並べ立てた。「佐賀駅経由ルートのフル前提としか思えない主張で、すごい違和感だ」。整備新幹線の現行ルールを踏み出す姿勢を示した“政治の力”に、佐賀県関係者の間では警戒感が広がる。

 「在来線」「地方負担」「ルート」「地域振興」。与党が「フル規格での整備にめどを立てるため」として検討方針を示した4項目は2019年1月、与党検討委の山本幸三委員長が佐賀県を訪れた際、山口知事が言及した。山本委員長は「条件」と受け止め、山口知事は「複合的な課題の例示にすぎない」と食い違いを見せた経緯がある。

 整備新幹線の現行ルールでは、JRは地元の同意を得て並行在来線を経営分離できる。建設費財源に充てるためJRが支払う貸付料(線路使用料)も開業後30年間で得られる収益をもとに算出する決まりだ。

 これまでJR九州は、並行在来線について「フル規格での整備にある程度めどがつく」ことが議論を始める条件と明言してきた。貸付料に関しても「開業直前に合意決定するもの」として、金額が先走りするのに難色を示してきた。

 今回、与党が示した「検討の方向性」はこうした現行ルールを踏み越え、並行在来線は「JR九州が引き続き運行せよ」、佐賀県の負担軽減では「貸付料の徴収期間を30年から50年に延長して増額せよ」と迫るのに等しい。ルールを盾に“お見合い”を続ける関係者の検討を加速させる狙いが透けて見える。

 国土交通省関係者は「与党からの指示は重く受け止め、しっかり対応する」と政治サイドの意をくむ。一方、佐賀県に対しては「国交省としてはフルと決めつけたわけではなく、『フルに優位性がある』という立場で『幅広い協議』に臨んでいる」と言葉を選ぶ。

 フル規格に向けて強引に突き進む「与党」と、佐賀県に配慮を見せる「国交省」という役割分担が明確になっている。

 山口知事は会見で「今、佐賀県が向き合っているのは『幅広い協議』だ」と強調し、特定の整備方式を前提にしない国交省との協議を重視する姿勢を示した。それだけに与党の動きにはいら立ちを隠そうとせず、「(整備方式を議論する)与党プロジェクトチームには佐賀県の意見を代弁してくれる国会議員もおらず、地元の意見を無視したような結論が出ている」と不信感をあらわにした。(取材班)

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