東京五輪の準備状況を監督する国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会のコーツ委員長が大会組織委員会との合同会議後の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が発令されている状況であっても開催は可能だと明言した。

 IOCからも組織委からも今回、最新の準備態勢が具体的に明らかにされた。そのこと自体は良かったが組織委の説明の中には、なぜもっと早くその情報を市民に届ける努力をしなかったのかと、首をかしげる内容のものがいくつかある。

 組織委は常に素早く、丁寧な説明を心がけるべきだ。コロナ禍に直面する大会開催について、市民の不安が広がった状況を見ればなおさらだ。

 先の共同通信の全国電話世論調査では五輪とパラリンピックの開催について「中止すべきだ」との回答が59・7%に上った。最新の情報が組織委の中で留め置かれたために、市民に懐疑的な見方が広がった面を見過ごすことはできない。

 組織委は今回、大会の医療体制について、2月に発表していた人員を約2割圧縮し、1日当たり最大で医師約230人、看護師約310人が必要で、その8割は既に確保できる見通しだと明らかにした。

 これまで組織委は約1万人の医療スタッフを確保する必要があると発表していた。そんなに多くの医療担当者が必要なら、一般市民の感染対応などに当たっている医療従事者の中から相当数の人員が大会に振り向けられるのではないかとの懸念の声が上がっていた。

 大会を優先するあまり、貴重な人的医療資源に負荷がかかり、地域医療に支障が出るようなことがあってはならないのは言うまでもない。

 組織委は計画の確定版だけでなく、対策の途中経過など公表できるものは公表するとの柔軟性を持つべきだ。この非常事態においては、市民の理解が欠かせないのだから。

 医師と看護師の人員圧縮も見通しをもっと早く公表できたはずだ。状況の推移とともに計画案を更新する手続きは、決して優柔不断と受け取られることはない。

 各国選手団はじめ大会関係者の来日が感染拡大のリスクを高めると、多くの市民が不安を感じていることも世論調査で分かった。これも組織委の説明不足に一因がある。

 大会関係者を巨大な泡(バブル)の中に閉じ込め、外部との接触を遮断するバブル方式が今回は採用される。既に多くの国際大会で採用され一般的になった措置だ。日本の観客や市民が大会関係者と接触する可能性は低いとみられている。

 IOCは米製薬大手ファイザー製のワクチンを各国選手団に無償で提供するといち早く発表した。組織委はすかさず、その効果などについて補足的な説明をすることもできたのではないか。

 米国務省は日本の感染状況を懸念し、渡航警戒レベルを最も厳しい「渡航中止」に引き上げたが、米国オリンピック・パラリンピック委員会は選手団の東京大会参加に影響はないとの声明を出し、参加準備を進める意向を改めて示した。また、選手へのワクチン接種は各国で進む。

 開幕まで2カ月を切り、科学的根拠に基づく具体的なコロナ対策を分かりやすく、タイムリーに発表していくことは組織委の最大の使命になった。(共同通信・竹内浩)

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