米モデルナ製と英アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチン承認に続き、東京と大阪で自衛隊運営の大規模接種センターが始動した。都道府県や政令指定都市による独自の大規模会場設置も拡大する見通しだ。

 10都道府県で緊急事態宣言が発令される中、東京五輪開幕まで2カ月を切った。菅政権は7月末を目標とする高齢者への接種完了に向け大規模接種で局面転換を狙う。ただ複数のワクチンをきちんと仕分けして適正配分する仕組みや、打ち手確保など効率的な接種態勢整備にはなお課題がある。国と地方自治体は連携を最大限に強化しこの難局を乗り切ってほしい。

 自衛隊運営のセンターは首都圏1都3県と関西3府県の高齢者それぞれ900万人、470万人が対象だ。最大で1日当たり東京1万人、大阪5千人に接種する想定だが、3カ月間フル稼働したとしても対象者の1割程度にしか接種できない。全国の高齢者3600万人に対応するには市区町村が実施する集団、個別接種がフル回転してもなお不足だ。政府の要請で宮城、群馬、愛知各県が開設し、今後は計約30自治体に広がる見通しの自治体独自の大規模会場を早く軌道に乗せたい。それには医師、看護師、歯科医師で注射の打ち手が十分確保できるのか、薬剤師などに広げることが可能なのか、政府は早急に検討し対処すべきだ。

 自衛隊のセンターについては、自治体接種との「二重予約」が防げないなどの問題点も判明した。予約の際に高齢者に注意喚起するほかない現状であり、政府と自治体の情報共有、連携が従来になく重要とみるべきだ。

 一方、都道府県と政令市は、7月末完了を目指す政府から尻をたたかれ、市区町村の力不足を補う大規模接種に乗り出す形だ。会場確保・設営、接種や問診に当たる要員確保などの準備は突貫作業を迫られている。自治体同士の人材争奪を避けるためにも大学病院や産業医がいる事業所の診療所などの活用も進めたい。政府が主導して地方への支援を強めてほしい。

 政府は複数のワクチン活用で接種加速化を図る方針だ。いずれのワクチンも2回接種が必要だが、自衛隊や自治体独自の大規模接種ではモデルナ製、市区町村が先に開始した接種はファイザー製を使う。1回目と2回目で別のワクチンを打つと短期的な副反応が多いとされるため、配送経路も含めてすみ分けを明確にし、現場の混乱を防ぐ。

 ただ大規模会場がある地域では、どこに予約するかで高齢者が二つのワクチンを選択できてしまう実態がある。別ワクチンを打つことがないよう防止策徹底を求めたい。

 アストラゼネカ製は、まれに接種後に血栓が生じる例が海外で報告されているため、政府は当面公費接種の対象から外す方針だ。ただ英国などで接種実績があって効果も確認されている上、6千万人分の供給契約が済んでいる同社製を完全に排除するのもどうか。リスクと利益の兼ね合いで接種年齢を絞るなど対策を講じた上で使用する道も探るべきではないか。

 内閣支持率がジリ貧の菅義偉首相は「ゲームチェンジャー」と位置付けるワクチン接種に起死回生を懸ける。だが集団免疫の獲得には国民8~9割の接種が必要ともされ、すぐに以前の日常が戻るわけではない。過度な期待もまた禁物だ。(共同通信・古口健二)

このエントリーをはてなブックマークに追加