全国有数の焼き物市「有田陶器市」のメーン通りから、車で約5分。丘陵地の県道を進むと、欧州の雰囲気漂う「菩提樹(ぼだいじゅ)橋」が見えてくる。90・5㍍の短い橋だが、西松浦郡有田町とドイツとの磁器を通した長きにわたる交流を表す架け橋でもある。

写真を拡大 有田ポーセリンパークに通じる道路で、ため池に架けられた菩提樹橋=西松浦郡有田町戸矢(小型無人機ドローンで撮影)


 橋の開通式は1993年4月。約1キロ先にある有田ポーセリンパークへのアクセス道として整備された。日本と欧州の磁器発祥の地である、有田町とマイセン市を中心としたドイツ。パークは、その磁器文化交流のテーマパークとして誕生した。

 橋の装飾はパークの雰囲気に合わせて、マイセン市と姉妹都市を結ぶ有田町が手掛けた。橋中央の欄干の外には、ドイツ・ベルリン市にあるブランデンブルク門のミニチュア。高さ約3メートルに、磁器製の女神と4頭立ての馬車のモニュメントが鎮座する。ベルリン市出身で町国際交流員のヴィンセント・ホイザさん(27)は、「初めて橋を通った時に、すぐにあの門だと気付いた」という。

 さらに、欄干に並ぶ中柱は、王冠のオブジェをいただく。古伊万里のコレクションで知られるツヴィンガー宮殿にちなんだ装飾だ。宮殿はマイセン市と同じザクセン州のドレスデン市にあり、有田ポーセリンパークにはこれを模した建物が建つ。そのため、「橋からパークへの道が、ベルリンからドレスデンやマイセンに続く道のように感じた」とホイザさん。駐日ドイツ大使ら母国関係者の訪問時に紹介しているという。

 日独交流のすそ野は広がる。橋のすぐそばにある特別養護老人施設「りんでんホームズ」。眞鍋裕見子施設長(71)は「菩提樹橋にちなんで名付けたんですよ」と教えてくれた。「リンデン」はドイツ語で菩提樹の意味。ブランデンブルク門のある大通り「ウンター・デン・リンデン」には、菩提樹の木々が並ぶ。「コロナ禍でなければ、お年寄りたちの散策コースなのだけど」と、眞鍋施設長は橋の方に視線を向けた。

 菩提樹橋の女神と馬車のモニュメントは、実は2代目だ。設置5年後の1998年夏、盗まれていたことが判明。「下のため池に落ちたのではと捜したが見つからなかった」と、町建設課の舘林正恭技術監(56)は振り返る。翌年10月、最初の青銅製に代わり、焼き物の産地らしい磁器製の像が取り付けられた。

 コロナ禍で、有田町とマイセン市は青少年相互派遣交流など影響を受ける。一日も早く収束し、マイセン市民が再び菩提樹橋を渡る日が待たれる。
 (文・古賀真理子、写真・米倉義房=佐賀新聞社)
※次回は6月15日の掲載です。

 

■グルメ観光スポット 有田ポーセリンパーク=西松浦郡有田町戸矢=

ドイツ・ドレスデンにあるツヴィンガー宮殿を模した建物が存在感を放つ有田ポーセリンパーク=西松浦郡有田町戸矢

 ドイツ・ドレスデン市にあるツヴィンガー宮殿を模した建物がシンボルの「有田ポーセリンパーク」。バロック式の豪華な装飾が施され、2014年公開の映画「黒執事」のロケ地になった。好きなキャラクターに仮装するコスプレイヤーにも人気のスポットだ。

 1993年4月、東洋と西洋の陶磁器交流のテーマパークとしてオープン。現在は、同町の宗政酒造が「酒と器」をテーマに運営している。コロナの影響で現在は休業中の展示室では、1870年代のウイーン万博に出品された高さ1メートル82センチの大花瓶も並ぶ。

 ろくろ、手びねり、絵付けが体験できる工房のほか、有田焼や佐賀、長崎などの特産品がそろい、酒の試飲ができる土産店もある。「さまざまに楽しんでもらえれば」と、山内隆史統括マネージャー(40)。入園無料。コスプレの撮影などは有料。問い合わせは、電話0955(41)0030へ。

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