正社員と非正規社員との間にある不合理な格差の解消を目指す「同一労働同一賃金」のルールが、4月から中小企業にも適用された。新型コロナウイルスの感染拡大の影響は企業経営に暗い影を落としており、中小企業の対応は決して万全とは言えないのが現状だ。

 日本商工会議所が2月に全国の中小企業約6千社を対象に実施した調査では、同一労働同一賃金について「対応のめどがついている」としたのは56・2%。前年同期に比べ9・5ポイント上昇したものの、4割強の企業がルール適用開始直前の時期に対応の見通しが立っていないとした。

 制度は不合理な格差の解消を求めているが、「不合理ではない」と具体的に説明できれば待遇差が認められる。ここに対応の難しさがある。

 厚生労働省が示すガイドラインは、通勤手当や出張旅費、慶弔休暇などでは正社員と同一の対応を求めている。一方で基本給では、能力や経験、業績・成果、勤続年数に応じて支給する場合は同一の支給を求めているが、「一定の違いがあった場合、その相違に応じた支給」を求める。こうした記述は賞与などでも見られ、あいまいな表現が目につく。

 さらに昨年10月には、非正規労働者と正社員の待遇格差を巡る訴訟で、最高裁が賞与と退職金などについて格差を認める判断を示しており、こうした事情も関係者を戸惑わせている。企業からは「何が不合理な待遇格差に当たるのか分からない」との声も聞こえる。

 厚労省は「働き方改革推進支援センター」を各地に設けて企業の相談に対応しており、県内にも佐賀市に設置されている。さらに、佐賀労働局では、昨年6月から同一労働同一賃金特別相談窓口を開設しており、本年度も継続している。相談窓口では、企業が対応の見通しを立てやすいよう細やかで具体的な助言、指導が必要だ。

 一方、企業側にも人事、賃金、福利厚生など各種制度の見直しへの本気度が問い掛けられている。そもそも同一労働同一賃金は働き方改革の看板政策と位置づけられ、労働人口が減少する中、労働生産性の向上と労働者の生活の質向上を両立させる狙いがある。

 2019年の日本の時間当たりの労働生産性は47・9ドルと経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国中21位で、先進7カ国では最下位。低い労働生産性の要因の一つとして挙げられるのが、「メンバーシップ型」と呼ばれる日本特有の雇用形態だ。職務を限定せずジョブローテーションを繰り返しながら企業に貢献する人材を育成する。年功序列型賃金、終身雇用もこの特徴だ。報酬が勤続年数や労働時間に依存する側面がある、専門性が高い人材が育ちにくい、などの課題が指摘される。

 労働生産性向上の手だての一つとして注目されているのが、欧米型の「ジョブ型」雇用だ。正社員か非正規かにかかわらず、職務ごとに賃金を規定するスタイルで、メンバーシップ型を「就社」とするなら、業務内容に人を当てはめるジョブ型は「就職」といえる。

 「ジョブ型」は欧米でも各国で形態が異なるとされる。企業が今抱える課題を踏まえた上で、どのような形態が適しているのか。検討を重ねながら、改善への歩みを着実に進めたい。(梶原幸司)

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