新型コロナウイルス流行で初の緊急事態宣言が出されてから1年余り。行きつ戻りつの日本経済は再びマイナス圏に沈んだ。この間の場当たり的な政府対応が現状を招いた点を踏まえれば、感染抑制こそ最大の景気対策であることは明白だ。ワクチン接種を加速するため、従来の発想を転換して取り組むべきである。

 内閣府が発表した今年1~3月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比の年率換算で5・1%減と3四半期ぶりのマイナス成長。2020年度では4・6%減と戦後最悪の落ち込みだった。

 1~3月期の悪化は、感染拡大で年明けから東京圏などへ宣言が再発令されたためで、GDPの6割近くを占める個人消費が前期比1・4%減少。政府の支援策「Go To トラベル」の停止や営業時間の短縮で、観光や外食などの打撃が大きかったとみられる。

 ほかの要因では企業の設備投資は1・4%減。外需は、輸出が伸びたものの輸入も増えて、全体でマイナスに働いた。

 感染状況が景気の明暗を分けたのは海外の主要国・地域も同様だった。

 米国の1~3月期は、年率6・4%増と3期連続のプラス成長だった。ワクチン接種の広がりが経済再開につながった上、バイデン政権による1兆9千億ドル(約200兆円)の大型対策の成立で、現金が1人最大1400ドル支給された効果が表れた。

 一方、感染が収まらずマイナス成長に陥ったのが欧州だ。ユーロ圏19カ国は2・5%減と2期続けての落ち込み。けん引役のドイツをはじめイタリア、スペインなどが振るわなかった。

 全体でマイナス成長となったこの時期の日本経済だが、企業の業績面ではコロナ禍の影響度合いによって二極化が一層鮮明になったと言える。

 外食では牛丼の松屋フーズホールディングスが今年3月期決算で過去最大の23億円、大戸屋ホールディングスは46億円のともに赤字に。航空や鉄道会社も厳しくANAホールディングスは過去最悪の4046億円、JR東日本は5779億円と1987年の国鉄民営化以降初の赤字をそれぞれ計上した。

 その半面、ゲームをはじめ家電、電子部品、半導体関連メーカーなどは「巣ごもり需要」や中国の景気拡大で高い利益を上げ、対照的だった。

 警戒したいのは4月以降に東京、関西圏などで宣言が改めて発令され、まん延防止等重点措置の対象自治体が一段と広がった点である。「K字型」と指摘される景気の両極化が、さらに長期化しかねないからだ。

 4~6月期もマイナス成長を見込む民間エコノミストが出始め、日本航空が今期の業績予想を「合理的に見積もるのは困難」と見送ったのも、そのような事情があろう。苦境の企業や家計に対する目配りと支援の継続が欠かせない。

 ワクチンが普及し接種完了者のマスク着用を原則不要とした米国や、同様に経済が本格再開し始めた英国とは雲泥の差だ。

 英国が迅速なワクチン接種に成功した一因として、担い手を医師らに限定せず、人手確保のため資格のないボランティアにも講習・研修を経て委ねた点が挙げられる。

 政治の覚悟と法改正を含めた行動があれば日本でも実現できよう。非常時に求められるのはそのような発想だ。

(共同通信・高橋潤)

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