90歳を過ぎてから詩作を始め、98歳で初めての詩集『くじけないで』を出し、101歳で亡くなった柴田トヨさんに「貯金」という一編がある◆「私ね 人からやさしさを貰(もら)ったら/心に貯金をしておくの/さびしくなった時は/それを引き出して元気になる/あなたも今から積んでおきなさい/年金よりいいわよ」。「世界最高齢の詩人」といわれたトヨさんの言葉は平易で、心に残る◆きのう5月18日は「5(ご)18(とは)」の語呂合わせで「ことばの日」だった。言葉は人体という幹に生える葉っぱのようなもの。そして、言葉を形作る一語一語は「花びら」だろうか。美しく咲く時は「優しさ」にあふれ、トヨさんが言うように、心に貯金ができそうだ◆とはいえ、会話は難しい。例えば、「頑張って」は好きな言葉の一つだが、すごく頑張っている人に向かって言うと、「これ以上どう頑張れば」と思わせることもある。叱られた時は落ち込むが、自分の糧になっていたことに後で気づく。「何も言わない方が楽なのに、労力を使って指摘してくれた」と思えばいい◆コロナ禍の閉塞(へいそく)感からか、やり場のない怒りがたまり、語気が荒くなる時もあるだろう。だからこそ言葉に花を咲かせたい。つらく寂しい時に引き出せる「心の貯金」はもらうだけでなく、あげることでも元気になれる。(義)

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