建設アスベスト(石綿)訴訟で、国と企業の賠償責任を認めた17日の最高裁判決の要旨は次の通り。

 【国の責任】

 1975年当時の建設現場は、輸入した石綿の約7割が使用され、電動工具の普及もあり、石綿粉じんを浴びる危険性の高い環境だった。

 国は73年ごろには、建設作業従事者が当時の基準を超える濃度の石綿粉じんにさらされている可能性を認識でき、現場で測定などをすれば、屋内の従事者が石綿関連疾患にかかる重大な危険が生じていると把握できた。

 国は73年の通達で石綿粉じん対策の指導を強化し、75年には石綿の表示や、石綿を扱う作業場では人体に及ぼす作用の掲示を義務付ける規定を設けた。この規定が施行された75年10月以降は、規制権限を行使して、建材への表示や建設現場の掲示で石綿の危険性を示し、防じんマスク着用を指導するべきだったが、行使しなかった。著しく合理性を欠き、違法だ。

 内閣は2003年、政令改正で石綿が重量の1%を超える建材の製造を禁じ、04年10月に施行された。この改正で石綿を含む建材の流通はほぼ阻止された。規制権限不行使の違法状態は、04年10月以降解消された。

 【一人親方】

 労働安全衛生法は、労働者に健康障害が生じる恐れがあるものを譲渡する際、容器や包装に人体に及ぼす作用や取り扱い上の注意などを表示しなければならないと定める。健康障害の恐れは、労働者か否かによって変わらない。物の危険性に着目した規制だ。75年10月以降の国の権限不行使は、労働者以外との関係でも、著しく合理性を欠き違法だ。

 【メーカーの責任】

 民法には、数人の不法行為で損害を与え、いずれの者の行為で損害が生じたのか不明な場合、因果関係の立証責任を(被害者側から)転換して、行為をした側が損害との間に因果関係が存在しないことを立証しない限り、連帯して損害の全部の賠償責任を負わせる趣旨の規定がある。この規定を類推適用し、横浜訴訟の被告は被災者らの各損害の一部について連帯して賠償責任を負う。

 被災者の働いていた現場に、被告の製品が届いていたことを立証する際には、石綿建材の製造期間などを調査した国のデータベースや、製品ごとの市場占有率などを使うこともあり得る。

 【屋外作業】

 大学などの測定結果から屋外の建設作業では風などで換気され、粉じんの濃度が薄められることがうかがわれる。屋外の作業で危険が生じていると被告は認識できず、建材に危険性を表示すべき義務を負っていたとは言えない。

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