建材に含まれるアスベスト(石綿)による健康被害を巡り、各地の元労働者や遺族が国と建材メーカーに損害賠償を求めた「建設アスベスト訴訟」のうち先行する4訴訟の上告審判決で、最高裁は国とメーカーの責任など高裁で判断が分かれた主要な争点で統一判断を示した。最初の提訴から13年。一連の訴訟は和解を経て解決に向かう。

 国の責任について判決は、1972年には石綿と健康被害の関連が明らかになっていたとし「75年には防じんマスク着用を指導監督したり、呼吸用保護具を使うよう義務付けたりすべきだったが、規制権限を行使しなかったのは著しく不合理で違法」と指摘。責任を問える期間を75年10月~2004年9月とした。

 また「一人親方」と呼ばれ、労働安全衛生法の対象外とされる個人事業主を巡って「危険なのは、労働者に該当するか否かで変わらない」とし、国の責任を問えると判示。複数のメーカーについては「個別にどの程度の影響を与えたのか明らかではない」としながらも、一定の範囲で連帯して責任を負うと述べた。

 加えて国が地裁、高裁で敗訴を重ねても法廷で争い続け、被害救済を遠のかせてきたことを考えると、その責任は極めて重いと言わなければならない。まだ提訴していない被害者も多いとみられ、速やかに補償制度を整え、幅広い救済に取り組むことが求められる。

 繊維状の鉱物で断熱性、耐火性に優れた石綿は高度成長期を中心に建材などに使われたが、建設現場などで粉じんを吸い込むと肺がんや中皮腫になることが分かり、1975年から段階的に使用が禁止された。潜伏期間は数十年に及ぶこともあり、多くは発症から1、2年程度で死亡する。

 2005年6月の「クボタショック」は社会に衝撃を与えた。兵庫県尼崎市にあった機械メーカー・クボタの工場で、04年度までの26年間に石綿が原因とみられる疾病で元従業員ら79人が死亡、被害は近隣住民にも及んでいた。石綿の使用は06年に全面禁止された。

 14年10月には、大阪・泉南地域の元工場労働者らが国に損害賠償を求めた訴訟で最高裁が粉じん対策を怠ったとして国の賠償責任を認める判決を言い渡し、国は救済に乗り出した。しかし08年から提訴が相次いだ建設アスベスト訴訟については屋内ではなく屋外の被害で「別問題」とし、争う姿勢を崩さなかった。

 建設アスベスト訴訟では、これまでに1200人以上が11地裁・支部に提訴。今回判決を言い渡した横浜、東京、京都、大阪の4訴訟で最高裁は論点ごとに上告の受理、不受理を決め、20年12月に国の上告を受理しない決定により賠償責任を認めた上で、一人親方を救済対象に加えた。今年2月にはメーカーの責任も認めた。ただ詳しい理由は述べていなかった。

 これを受けて与党内では原告との早期和解と和解金支払い、提訴していない被害者への給付金などの検討が進められている。毎年500~600人、患者が増えており、高齢者が多い。一刻も早い解決が求められる。

 さらに1950年代半ばから施工され、石綿を含む建材が使われた可能性のある建物の解体が2028年ごろ約10万棟に上り、ピークを迎えると国土交通省は推計。被害拡大の恐れもあり、対策の徹底が欠かせない。

(共同通信・堤秀司)

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