徐福が葦(あし)の茂みをかき分けて上陸した際、川に落ちた葉が魚になった-。弘法大師が葦の葉を取って川に浮かべたら魚になった-。そんな伝説が残るのも分かる気がするエツの姿形である◆カタクチイワシの仲間で、体長は30~40センチ、細長くて平べったい。有明海湾奥に生息し、この季節になると産卵のために筑後川を上ってくる。漁期は5月から7月中旬。まさに地域限定、期間限定で、「まぼろしの魚」ともいわれる夏の食材である◆「佐賀市もろどみin食の会」(津田良雄会長)が開いたエツ料理の披露会を取材した。エツは小骨が多く、骨切りをする。サクッ、サクッとリズムよく、片面で150回ほど包丁を入れるという。その手際は耳にも心地良い職人技。刺し身や煮付け、塩焼き、すり身など紹介された料理は多彩で、どれもうまそうだ◆と、ここまで書いておきながら、一度もエツを口にしたことがない。何事も強く求めなければ結べない縁があるようで、この日も予定されていた試食は新型コロナの感染予防で中止になった。コロナはこんなところまで邪魔をする◆披露会に出席していた山口祥義知事に尋ねると、南蛮漬け、中骨のから揚げ、押しずしがお薦めだとか。見事な骨切りを見せてもらったからには、こちらは自腹を切って応えようか。旬の味が楽しみである。(知)

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