わが家の車庫に、今年もツバメが巣を作った。これから新たな命が誕生し、夏には巣立っていくだろう。◆ソプラノ歌手でエッセイストの塩谷(しおのや)靖子(のぶこ)さんは8歳の頃、視力を失った。盲学校を卒業後、コンピュータープログラマーとして就職したが、結婚生活と両立できず退社。42歳の時、声楽の勉強を始め、音大卒ではないのに各種コンクールで入賞するまでに◆神様は視力の代わりに「音感」という才能を彼女に与えたのだろう。自著『寄り道人生で拾ったもの』で、塩谷さんは「何かを歌で表現する時、発声などのテクニック以外に必要となるのは感性」とし、「見ないで想像すること」の訓練を積み重ねてきた視覚障害者であれば健常者と比べて感性が劣るようなことはない、と記す◆その一つが、塩谷さんが楽しむ「バードリスニング」だと思う。テープなどで野鳥の声を勉強し、約100種類の鳥の声を聞き分けられるようになった。鳥好きの仲間と野山へバードリスニングに出かけ、英国旅行では「小夜啼鳥(さよなきどり)」と訳される「ナイチンゲール」の鳴き声を聞くことができた◆鳥たちは耳だけでなく目にも優しい。知人の男性は散歩を兼ねてバードウオッチングを始め、「視力がよくなった」と笑う。筆者は身近な場所でツバメを見られる。観察日記でもつけようかな。16日まで「愛鳥週間」。(義)

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