聖火リレーに集まった観客に密にならないように呼び掛けるスタッフ=9日午前、藤津郡太良町(撮影・鶴澤弘樹)

聖火リレーに訪れた人々へマスク着用を呼びかけるプラカードを持つスタッフ=9日午前10時25分、鹿島市の祐徳稲荷神社前(撮影・山田宏一郎)

 夢の祭典への思いが詰まった歴史的イベントは、厳戒下の船出となった。9日に佐賀県内で始まった東京五輪の聖火リレー。新型コロナウイルスの感染者急増で、自治体は沿道や会場の密集対策に苦心。「この状況で走っていいものか」と葛藤を抱えながら晴れ舞台を迎えたランナーもいた。

 聖火リレーの出発式が行われた藤津郡太良町の大魚神社海中鳥居前には、220人が訪れた。町は観覧者に消毒や検温を行った上で「両腕を広げ、前後左右の間隔を空けて」「ランナーへの応援は大声を出さずに拍手で」と再三アナウンスを入れ、注意を促した。式典に参加した吹奏楽部の中学生は、フェイスシールドを着用しての演奏。華やかな雰囲気の中にもピリッとした空気が流れた。

 県内は前日に1日の感染者数が過去最多となる76人に上ったばかり。観覧に訪れた町内の女性は「トーチに点火される瞬間を見られて良かった。ただ、感染は怖かった」。

 リレー本番前日に関連イベントの無観客実施や式典の規模縮小を決めた武雄市。県実行委員会はインターネットのライブ中継での観覧を促したが、ランナーの通過時間が近づくと、多くの人が沿道に集まり始めた。マスク着用や拍手での応援を呼び掛けるプラカードを持ったスタッフが巡回した。感染を恐れるのは観覧者も同じで、マスクを二重に着けた人や手持ちの消毒液をこまめに塗る人も多かった。

 武雄市の女性(67)は「スタートとゴール地点は人が多いだろうから、少しでも人が少ない場所を選んだ」と周囲を見回しながら、沿道に立った。「聖火リレーが中止となったところもある。実施されたことで、気持ちも明るくなる」と温かなまなざしで走者を見送った。

 唐津市は、出発式で予定していたダンスや高校生ブラスバンドの演奏を中止し、点灯式と、峰達郎市長と第1走者によるあいさつだけにした。市の担当者は「出演者も楽しみにしていただけに残念」とやるせなさをにじませた。200人の希望者がいたボランティアは直前に辞退者が続出、配置人数の調整に追われた。

 ランナーとして地元太良町を走った池田三之さん(57)は「コロナ禍で苦しむ患者さんを助ける医療スタッフのみなさんのことを考えると、思い切って喜びを表に出していいのかという気持ちもあった」と複雑な胸の内を明かした。(古川公弥、西浦福紗、横田千晶)

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