その泣き声は希望の響きだったのではないだろうか。佐賀市諸富町で写真館を営む外尾和義さん、星羅さんの次女は431グラムで産まれた。「泣かないと聞いていたのに、産まれてすぐ泣いてくれた」。星羅さんの言葉に母親の深い慈愛を感じる◆次女は「祷(祈)りが結ばれるように」との願いを込め、祷結(とうり)ちゃんと名付けられた。この春、小学校に入学。成長の様子を伝える記事(5日付)を読みながら、見知らぬ家族の物語に胸がじんとした◆赤ちゃんは産まれた直後から大きな声で泣く。ゴリラやチンパンジーなどの赤ちゃんはおとなしいのに。霊長類学者の山極壽一さんは、人間の母親は赤ちゃんをすぐに手から離してしまうからだと推測する◆人間は脳を成長させるため、ゴリラの5倍の体脂肪率で産まれてくる。母親は重くて抱き続けられない。山極さんは「お母さんから離れた赤ちゃんは不具合を訴えるために泣き、それを聞いた周囲の人たちはこぞってなだめようとする。人間の赤ちゃんは共同で育てるようにつくられている」という◆外尾さんの記事が載った日の社会面には1歳の子に熱湯をかけた群馬県の母親の記事があった。「泣きやまないことに腹が立った」。虐待のニュースに接するたびに思う。元気な泣き声に心が和む人であれば、こぞってなだめる支えがあればと。(知)

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