今春、小学校に入学した外尾祷結ちゃん(外尾和義さん撮影)

祷結ちゃんは生後しばらく、保育器の中で育った=2015年5月(外尾さん提供)

写真館「MukuMuku」の前に勢ぞろいした外尾さん家族=2021年4月、佐賀市川副町

 431グラムの小さな命が人生を変えた。佐賀市諸富町の外尾和義さん(35)は、超低出生体重児だった次女の祷結(とうり)ちゃん(6)の誕生を機に、かつて抱いたカメラマンになる夢を再び目指し、実現させた。撮り続けてきた家族のアルバムにはこの春、健やかに成長した祷結ちゃんが小学校に入学した写真が加わった。

 和義さんが諸富町内で会社勤めをしていた約6年前のことだった。妊娠5カ月の妻の星羅(せいら)さん(35)が健診を受けたところ、異常が見つかり、佐賀市内の病院に緊急入院した。医師から「子どもは助からないかもしれない。もし生まれても生存率は50%」と告げられ、産むか人工中絶をするか、選択を迫られた。

 悩み苦しんでいたある日、胎児の状態を確認した医師が驚いた。「子ども自身が大きくならないように制御している。栄養がなくても生きようとしている」。星羅さんは「産みたい」と望み、和義さんも「どんなことがあっても大切な子」と応えた。

 妊娠25週目、祷結ちゃんが生まれた。「泣かないと聞いていたのに、産まれてすぐ泣いてくれた」と星羅さん。新生児集中治療室(NICU)の保育器に入った祷結ちゃんを見つめながら「あまりに小さくて、皮膚が破けそうで、指先で触れることさえ怖くてできなかった」。名前には「祷(祈)りが結ばれるように」という願いを込めた。

 和義さんは入院費用を捻出(ねんしゅつ)するため、夜中や休日にアルバイトを入れた。合間を縫って、祷結ちゃんがいるNICUを訪れたとき、別の乳児の父親から声を掛けられた。その人は10年ほど前、カメラの魅力を教えてくれた恩師だった。「うちで働きませんか」とスタジオに誘われ、仕事の傍ら結婚式のカメラマンを始めた。自然な笑顔を捉えた写真は新婚の夫婦から喜ばれた。

 祷結ちゃんは生後7カ月で退院。一定の体の大きさになるまで毎晩、注射が欠かせず、3カ月に1度の通院を続ける。暮らしは同世代の子どもと変わらず、2人のきょうだいと遊び回り、保育園に通ってきた。今年4月に小学校へ入学し、片道2キロの道のりを元気に歩いて登校している。

 和義さんは祷結ちゃんの成長と重なるように、カメラマンになる夢が大きくなった。その思いに気付いた星羅さんの応援も受け、会社を辞め、2020年2月に写真館「MukuMuku(ムクムク)」を佐賀市川副町に構えた。

 「子どもに縁や出会いの大切さを教わった」と振り返る和義さん。本業で撮る写真には思いを込める。「家族や、一緒に写る人との時間を大切に思う気持ちまで込めたい」(志波知佳)

 

 ■超低出生体重児

 体の機能が十分に成熟しないまま生まれた乳児。2500グラム未満が低出生体重児で、このうち千グラム未満が超低出生体重児と位置付けられている。正出生体重児は2500グラム以上~4千グラム未満。2019年の人口動態統計で、出生時の体重が千グラム未満は全国で2646人、佐賀県は15人となっている。

 

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