時とともに意味や使い方が変わる言葉がある。例えば〈こだわる〉は「ささいな事にこだわる」のように否定的な場合にだけ使われたが、現在は「食材にこだわる」など、いい意味でも使う。誤った使い方が浸透したのだが、いまさら誤用だと指摘するのはこだわりすぎだろう◆逆の意味を持つのは、ことわざにもある。〈犬も歩けば棒に当たる〉。一つ目の意味は、何かをやっていれば意外な幸運に出会うこと。「足で稼げ。犬も歩けば棒に当たるだ」と先輩諸氏に指導された人も多いのでは◆二つ目の意味は、何か行動すると災難に遭遇すること。棒に当たっても痛いだけ。「えさが見つかる」なら分かるのだが…と、少しもやもやしていたので、こちらがしっくりくるようでもある◆手元のことわざ辞典には〈江戸系いろはカルタの「い」の句として著名だが、まったく相反する意味をもつ珍しいことわざの一つである〉と解説されている。江戸時代の文献を調べても、幸運説、災難説の両方が出てくるそうだ◆コロナ下の大型連休も残り2日となった。災難説に従って棒に当たらないようにと、外出を控えている人も多いだろう。佐賀県内の感染者は連日2桁が続いている。しばらくは感染予防に努め、収束した後は幸運説に従おうか。我慢をした分、意外な幸運に出会えるかもしれない。(知)

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