着物の帯で作ったブーツを手にする兵頭峰さん。「この世に一つの美しさを見てほしい」と語る=横浜市

着物の帯で製作したブーツ

「峰亜」のホームページはこちらから

 1本の帯が美しいブーツに生まれ変わる―。鳥栖市出身の兵頭峰(たかし)さん(36)=横浜市在住=が、着物の帯を用いたオーダーメードブーツを製作している。昨年4月、経済産業省が支援する「クールジャパン」商品に選定された。パリ市内で出品予定だったものの、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、世界デビューは延期になった。海外富裕層をターゲットにしていた方向性を転換し、国内市場に照準を合わせる。

 兵頭さんは、オリジナルブーツを手掛ける合同会社「峰亜(みねあ)」を設立し、2019年ごろから着物の帯を表面の素材に使うブーツ「寿」シリーズの製作に着手した。国内の職人が手作りする。同社が保有する帯を使い、顧客の好みを聞きながら使用する帯や柄の配置などを決めていく。繊細な模様と力強いブーツの組み合わせが、新鮮な印象を与える。

 兵頭さんは鳥栖高卒業後に上京した。音楽関係の仕事を経た後、2011年3月の東日本大震災でボランティア活動に取り組んだ。数年間の会社員経験を経て、現在同社のデザイナーを務める市呂亜美(いちろつぐみ)さん(47)と知り合い、起業した。

 ファッション分野で「世界にインパクトを与えるものを作りたい」という発想から、着物の帯を素材にした靴の製作を始めた。試作を繰り返す中で、帯を大きく使えるという理由で表面積の大きいブーツに形を絞り込んだ。顧客が持つ帯を素材にすることもできる。ショート、ミドル、ロングの3種類があり、価格は36万~47万円。

 海外に日本文化の魅力を発信する政府のクールジャパン戦略の一環として、昨年4月に予定されていた選定商品のパリ出品は、コロナ禍で中止となった。兵頭さんはブーツが海外に認知される好機になると期待していた。海外イベントを見込めない状況となり、現在は国内市場の掘り起こしを模索する。

 クールジャパン戦略を巡っては、国内外のイベントや大使館による対面式の働きかけなどこれまでの方法が難しくなったことで、見直しを迫られている。「コロナ後」の反転攻勢を見据え、5月ごろをめどに策定する「知的財産推進計画2021」に反映する。

 インターネット上にブーツの写真を載せたところ反響を呼び、英国の雑誌社から取材依頼があった。兵頭さんは「タンスの中に眠らせている思い出の帯を、形を変えて残したいという方もいると思う。国内で、海外で、この世に一つの美しいブーツを見てほしい」。自宅と事務所を兼ねたアパートの小さな一室から、世界をうかがう。(山口貴由) 

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首都を拠点に、長年にわたって活動したり、新しいことに挑んだりしている佐賀県出身者がいます。社会状況を重ねながら、思いを伝えます。(随時掲載) 

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