若い記者の記事を読みながら、デスクが首をかしげていた。「昭和時代っていいますかね」。昭和生まれとしては「時代」を付けられると違和感がある◆中村草田男が〈降る雪や明治は遠くなりにけり〉と詠んだのは明治が終わって約20年後。それに比べれば昭和が終わって平成、令和と32年がたつ。昭和は確実に遠くなっている◆そんな世代に、なぜ「昭和の日」なのかを知らない人がいても不思議ではない。天皇誕生日だったと記憶しているのは40代以上だろうか。祝日法では「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」となっている◆「激動」といわれるように、悲惨な戦争を経験した日本は驚く速さで経済成長を果たし、豊かな社会を実現した。いろんな評価はあろうが、昭和の後半は勢いがあった。平成に入ってバブル崩壊、相次いだ震災と厳しい状況が続き、今はコロナ禍にあえいでいる◆〈歴史は繰り返さないが、韻を踏む〉。全く同じではないが、歴史は似たような音色を繰り返すという意味だろうか。もし本当に韻を踏むのなら、いずれ上向きに転じるときがくる。コロナが終息した後は、戦後とは違ったかたちで韻を踏み、明るさを取り戻したといえる歴史をつくれたならと願う。そのために何をすべきか、将来に思いをいたしたい。(知)

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