衆院北海道2区、参院長野選挙区の両補欠選挙と参院広島選挙区再選挙の衆参3選挙は、自民党が候補を立てなかった北海道での不戦敗を含め全敗を喫した。

 昨年9月に就任した菅義偉首相にとって初の国政選挙で下された審判には、「菅政治」への強い不信感が表れたと言えよう。特に最大の争点になった「政治とカネ」問題と新型コロナウイルス感染症への対応を巡り、政府、与党が有権者の信任を得られなかったとみるべきだ。

 長野と広島は与野党対決の構図だった。とりわけ選挙買収で有罪が確定した河井案里前参院議員の当選無効に伴う広島再選挙の勝敗が焦点とされた。一昨年の参院選に自民党公認で立候補した河井前議員は、夫で公判中の元法相とともに離党している。だが、自民党本部からつぎ込まれた巨額の活動資金が買収に使われたのではないかとの疑念は消えていない。

 その参院選で河井前議員を熱心に応援したのが当時、官房長官だった菅首相だ。自民党が強固な基盤を持つ広島で、公明党が推薦しながら敗北したのは、党総裁の首相や与党の釈明に有権者が納得していない証左だろう。

 北海道2区補選も収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農相の議員辞職による。元法相と同じく菅首相に近い存在だった元農相も自民党を離党し、後継候補の擁立も見送られたものの、それで首相らが「免責」されたわけではない。コロナ禍での再選挙、補選で有権者に負担を強いたこと自体、政権側の責任は重い。低投票率の要因にもなったはずだ。

 長野補選は、新型コロナに感染した立憲民主党の元国土交通相の死去を受けて行われた。政府は変異ウイルスによる感染拡大に歯止めがかからないため、3度目となる緊急事態宣言を東京や大阪など4都府県に発令した。期間は25日から5月11日までの17日間で、市民生活や経済活動を著しく制約する内容だ。

 首相は発令を決定した23日の記者会見で「このまま手をこまねいていれば、大都市での感染拡大が危惧される」「効果的な対策を短期間で集中して実施することで、ウイルスの勢いを抑え込む必要がある」として国民に理解を求めた。

 発令はやむを得ないとしても、2度目の宣言の全面解除を決めた3月の会見で首相は「再び宣言を出すことがないよう対策するのが私の責務だ」と明言していた。感染「第4波」を防げなかった首相こそ「手をこまねいていた」と批判されても仕方あるまい。政治責任を23日の会見で問われたものの、首相は正面から答えることはなかった。

 今回の選挙が実施された3道県は、緊急事態宣言や「まん延防止等重点措置」の対象に含まれていない。それでも有権者は首相の一連の言動やコロナ対策への不満、不安もあって野党候補に1票を投じたのではないか。

 菅首相は3選挙の結果について「謙虚に受け止め、正すべき点はしっかり正していきたい」と述べた。本心からそう思うのであれば、「政治とカネ」問題やコロナ対策を真摯(しんし)に反省し、独善的と批判される政権運営を改める必要がある。

 同時に「結果責任」を負う覚悟を明確に示さなければ、首相の訴えは国民に響かず、共感を得るのはますます困難になるだろう。(共同通信・鈴木博之)

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