永渕洋三さんの評伝『「あぶさん」になった男』

評伝を手にする永渕さん(左)と妻の正江さん=佐賀市の焼き鳥店「あぶさん」

 人気漫画「あぶさん」のモデルとなった元プロ野球選手、永渕洋三さん(72)=佐賀市=の評伝が刊行された。「酩酊(めいてい)状態で本塁打を放つ」など漫画の主人公をほうふつとさせるエピソード満載で、永渕さんの豪快な野球人生を紹介している。

 評伝は『「あぶさん」になった男』(KADOKAWA刊、税別1500円)。野球を題材にした作品が多いノンフィクション作家、澤宮優さんが著した。投手として活躍した佐賀高校時代から、社会人の東芝を経て近鉄、日本ハムで活躍したプロ時代、引退して佐賀市で焼き鳥店を始めるまでの永渕さんの野球人生を7章に分けて記している。

 プロ野球の内幕が垣間見える興味深い内容だが、「代打で本塁打を打った後、リリーフ投手、外野手の“一人三役”をこなした」など、永渕さんの“野武士”的なエピソードの数々は痛快。「あぶさん」の作者水島新司さんに漫画のヒントを与えた「飲み屋のツケを払うためにプロ契約した」をはじめ、「オールスターで酩酊状態で打席に立ち、巨人のエース堀内から本塁打」など、酒にまつわる逸話も数多く語られている。

 一方、「一番打ちやすい初球を狙う」「アウトの確率が高いピッチャーゴロでは一塁まで走らない」など、プロ選手としての合理的な考え方も紹介。1969年に首位打者に輝いた職人的な打者の側面もつづる。

 現在、佐賀市で焼き鳥店「あぶさん」を営む永渕さん。自身をモデルにした漫画については一度も読んだことがなく、評伝について「一冊の本になるほどの選手ではなかった」と謙遜しながらも、「酒にまつわる話ばかりでなく、繊細なプロの時代を書いてくれた」と喜ぶ。

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