物理や化学がとにかく苦手だった。問題を読んでも、何を問われているかさえ分からない。文系人間から見ると、すらすら答案用紙を埋めていく友人は宇宙人のように映った◆社会に出ても、理数系の話についていけないのは変わらない。先日、1面に大きく載った嘉数(かすう)誠・佐賀大学理工学部教授の研究成果も理解するには程遠かった。「ダイヤモンド半導体を使って電力を制御したり、変換したりする電子部品を作製し、世界最高水準の出力電力を得ることに成功した」。何度読んでも???である◆記事に文句をつけているわけではない。専門的なニュースを理解するには、読む方も一定の基礎知識が必要になる。それが備わっていない身としては「とにかくすごい研究なのだろう」と感心するしかない◆ノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎さん(1906~79年)の言葉を思い出す。〈ふしぎだと思うこと、これが科学の芽です。よく観察してたしかめ、そして考えること、これが科学の茎です。そうして最後になぞがとける、これが科学の花です〉◆科学の芽はあったような気もするが、茎も花も育てられずにこうして小欄を書いている。「私も同じよ」。科学とは無縁のところで頑張っているご同輩の文系読者が共感してくれたなら、コラムの茎は少し伸びたといえるのだが…。(知)

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