在宅介護の高齢者へのワクチン接種

 新型コロナウイルスのワクチン接種を巡り、自宅で寝たきりなどになっている「在宅介護」の高齢者に対し、訪問接種による対応を検討する動きが広がっている。接種会場に出向くのが難しいためだ。米ファイザー製ワクチンは生理食塩水で希釈後、6時間以内に使い切らないといけないため、1瓶当たり5~6回分をどう無駄なく使うかの工夫が求められる。

 当面はワクチン供給量が限られる影響で、クラスター(感染者集団)のリスクがある高齢者施設から優先的に打つ自治体も目立っており、在宅介護の人がいつ打てるかは不透明な面もある。

 65歳以上の高齢者の多くは、体育館などの会場に出かける「集団接種」か、かかりつけの医療機関で受ける「個別接種」となる。ただ、重い病状や身体機能低下により外出が難しい在宅の高齢者には別の手段が必要だ。

 「訪問して打つ以外の方法は考えられない」と話すのは仙台市の担当者。自宅への訪問診療などの際、医師が接種する。ただ、医師は集団接種や個別接種に携わっており人手も限られる。移動も含め1人当たりの接種に一定の時間がかかる在宅介護では、時間の調整が難しくなる恐れもある。

 岩手県西和賀町も医師による訪問接種を検討する。介護保険サービスを受ける要介護度で見ると、状態が軽い方から要支援1~2、要介護1~5の7段階に区分される。訪問接種の対象について町の担当者は「一律に要介護度で線引きすることはしない」と指摘。状態の軽い人でも必要なら訪問して打つ考えだ。

 厚生労働省は、訪問接種に関し「衛生上の観点から診療所などで、あらかじめ希釈したワクチンをシリンジ(注射筒)に詰め、運んでほしい」と自治体に説明する。注射器にワクチン溶液が入った状態にしてから出向くことを想定している。

 課題は6時間という希釈後の使用時間制限。医師はワクチンに無駄が出ないよう診療所などで別に打つ人数、出発時間に注意を払う必要がある。

 小規模自治体ならではの課題も。複数の離島で構成される愛媛県上島町は、有人島に計6カ所の集団接種会場を設ける。ただ、対象の高齢者が計約3千人なのに対し、対応できる医者は3人。在宅介護の人への接種時期は「医師に時間を見つけてもらうようお願いするしかない」(町の担当者)としている。

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