バイデン米大統領が主催した気候変動に関する首脳会合(気候変動サミット)に、菅義偉首相をはじめ招待された各国・地域の首脳40人全員が参加し、取り組み強化を宣言した。深刻化する気候危機に立ち向かう国際社会の努力に、一定の前進があったと評価したい。

 菅首相も、2030年度の温室効果ガス排出量を13年度比で26%減らすという目標を大幅に上積みし、46%にすることを表明した。

 この目標は国際的なレベルでは不十分で一層の拡大が求められるのだが、達成は極めて困難なのが実情だ。脱炭素社会の実現を宣言した菅首相には、社会と経済の姿を根本から変えなければそれが実現できないのだという覚悟が必要だ。

 サミットの主催によって、先進国最大の排出国でありながらパリ協定から離脱するというトランプ前大統領の後ろ向きな姿勢を転換し、世界の温暖化対策をリードする姿勢を米国が示したことは大きな希望となる。だが、国際社会が抱える課題は依然として大きい。

 日本や米国など120を超える国が50年に排出量を実質的にゼロにするとの目標を掲げたのは、産業革命以来の気温上昇を1.5度に抑える努力をするというパリ協定の目標達成に不可欠だからだ。といっても目標達成にはこれでは不十分だ。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、1.5度の達成には30年の温室効果ガスの排出量を10年比で45%減らす必要がある。

 サミットの成果を考慮しても、国際社会が目標達成にめどをつけたとは言えない。サミットを目標達成への最初の1歩と位置づけ、各国は一層の排出削減対策を積み重ねる必要がある。

 日本の46%減は大きな数字に見えるが、IPCCが必要とする10年比45%減には届かない。米国が示した30年に05年比50~52%削減との新目標、1990年比で68%減という英国、同55%減の欧州連合(EU)の4者の中で、最も目標が小さいという専門家の分析もある。

 温暖化の進行に危機感を募らせる若者の団体が「1.5度目標に整合しない46%削減では私たちの未来は守られない」と批判するのは当然だ。

 日本が抱える最大の問題は、先進7カ国(G7)の中で、最も石炭火力への依存度が高いという現実だ。

 中国が国内石炭使用量の削減を、韓国が海外での石炭火力発電支援の中止を表明したのに対し、菅首相の石炭火力への言及は皆無だった。

 大幅な排出削減のためには、化石燃料依存をやめ、再生可能エネルギー拡大と省エネを徹底的に進めることが必要だ。その認識と覚悟が菅首相にあるだろうか。今の政策を見る限り答えが「ノー」であることは明白だ。

 削減目標の深掘りのためにも、国際的な信用を獲得するためにも一刻も早く石炭火力の全廃を決断するべきだ。

 温暖化の被害に苦しむ途上国支援も大きな課題だ。バイデン大統領はサミットで、資金援助の大幅拡大を表明したが、経済規模で米国に次ぐ先進国である日本での議論はまったくない。

 気候危機が深刻化する中、思い切った対策を取ることにちゅうちょし続けて、日本が抱え込んでしまった課題の大きさが鮮明になったサミットだった。(共同通信・井田徹治)

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