「紫陽花(あじさい)の雨」という言葉もあるように、この花は雨がよく似合う。梅雨時、しとしとと降る雨のしずくが青や赤紫の花びらをぬらす景色は気持ちを落ち着かせてくれる◆その季節には少し早いが、先日、佐賀県内の生産者グループが育成した紫陽花の新品種を見学した。県内では初めて取り組んだ品種開発。県農業試験研究センター、農業改良普及センターと協力し、構想から約10年をかけて初出荷にこぎつけた◆新品種は赤く色づく八重手まり咲きの「可愛花(かわいか)」と、八重がく咲きの「雨のち星」の2種類。何度も交配を重ねて完成した労作で、「母の日」(5月9日)の贈り物などとして店頭に並ぶ◆グループ会長の富岡和彦さんによると、紫陽花の品種は数多く、2年から3年で人気は廃れる。苦労して開発しても、定番の品種として残るのはほんの一部。品種改良は今後も続け、毎年2、3品種を市場に送り出す予定という。こうした生産者の見えない努力によって癒やされているのだと改めて思う◆東京や大阪などに3度目の緊急事態宣言発令が決まった。「紫陽花の雨」が降るころには収まっているだろうか。先の見えない状況は空気まで重たくするようで、気持ちは沈みがちになる。こんなときだからこそ、佐賀オリジナルの品種が花開きますようにと願いつつ、静かに待ちたい。(知)

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