世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を宣言したのは昨年3月。その頃は、スペイン風邪を引き合いにした記事も目立った◆スペイン風邪は1918年に感染が広がり、2年間にわたって世界各地で流行した。感染者は当時の世界人口の4分の1程度に当たる5億人、死者は1億人に達した可能性があるとされる◆当時の状況を知る由もないが、唐津出身の建築家・辰野金吾(1854-1919年)もスペイン風邪で亡くなったと知り、遠い歴史の出来事がぐっと近づく感覚があった。新型コロナウイルスでは、コメディアンの志村けんさんや女優の岡江久美子さんの死に同じような感覚があった◆それまでも決して人ごとだと思っていたわけではないが、一つの出来事で「自分ごと」になる。2人の死は多くの人に衝撃を与え、「油断してはいけない」というメッセージになった。人の死に勝手な意味を持たせては失礼かもしれないが、尊い命の喪失が警鐘を鳴らし、より感染に気をつけるようになったのは確かである◆岡江さんが亡くなって、あす23日で1年になる。テレビで見せてくれた笑顔、新型コロナ、63歳、突然の死…。「第4波」といわれる感染拡大の中、故人をしのんで連想し、「自分ごと」と気を引き締める。これも供養と。(知)

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