米中両国は人権や安全保障、経済貿易などを巡り激しく対立しているが、地球温暖化対策については協力し、国際枠組み「パリ協定」に基づく2020年代の行動を強化していくことに合意した。ケリー米大統領特使が上海を訪問し、解振華担当特使と会談後の共同声明に盛り込まれた。

 二酸化炭素(CO2)の2大排出国である米中の協力を歓迎したい。ただ「米中新冷戦」と言われるほど両国の不信感は根強い。地道で冷静な対話を通じて信頼を醸成し、まず温暖化対策で実効を上げ、人権や安全保障などの対立点でも歩み寄るよう期待する。

 米国のトランプ前大統領はパリ協定から離脱したが、バイデン大統領は再加入し、温暖化対策に注力。中国の習近平国家主席も昨年9月の国連総会で、60年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにすると宣言していた。

 温暖化対策で指導力を発揮しトランプ氏と違う国際協調をアピールしたいバイデン氏と、人権や海洋進出、新型コロナウイルス対応の不備などで信用を失う中、対外イメージを修復したい習氏の思惑が一致した。

 ただ、習氏は気候変動問題を「政治的なカードにするべきではない」とし、米主催のオンライン首脳会合への出欠を明らかにしておらず、今後も曲折が予想される。

 17年の世界のCO2排出量のうち中国は28・2%、米国は14・5%を占め、両国で4割を上回る。米中が積極的に取り組まなければ温暖化対策の効果は上がらない。両国が政治的な対立と切り離して対策の協力に本腰を入れるよう求める。

 3月の米中外交トップ会談で、双方は民主主義や台湾などの問題について激しく非難し合う一方、気候変動問題やコロナ対策では利害の一致を確認した。世界の平和と安定に重い責任を持つ二大国は協力が可能な問題から対話を進め、和解への道筋を探るべきだ。

 菅義偉首相とバイデン氏の会談後の日米首脳共同声明には「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」と明記して、中国の台湾への武力威嚇をけん制。中国が領有権を主張する尖閣諸島(沖縄県)を共同で防衛し、半導体を含む国家機密に関わるサプライチェーン(供給網)づくりで連携すると確認した。欧州連合(EU)も初のインド太平洋戦略の策定に合意。米国主導で日欧にオーストラリア、インドを加えた対中包囲網の構築が進む。

 習氏は国際フォーラムのオンライン演説で、気候変動問題に「積極的に取り組む」と強調しながらも「一国、あるいは数カ国が定めた原則を他に押し付けてはならない」「人為的なデカップリング(切り離し)は経済規律と市場の規則に反し、利益をもたらさない」と対中包囲網に反発した。

 日米欧など自由主義陣営は結束し、中国に人権を擁護し、覇権を追わないよう働き掛けていくべきだが、中国を挑発するだけに終わらないよう緻密な戦略が必要だ。

 日本は日米同盟を基軸としつつも、歴史的な交流と密接な経済関係を持つ隣の新興大国、中国との関係も極めて重要だ。沖縄県・尖閣諸島を巡る対立も重なり国民の対中感情は悪化しているが、米国一辺倒ではなく、米中間でバランスを保ち、双方に対話と和解を促す戦略的外交が不可欠だ。(共同通信・森保裕)

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