日本の昔話には、しばしば親孝行な子どもが登場する。熊本県宇土市に伝わる「孝行娘」は病気がちな母を助け、茶店を営んでいた。そこに殿様が立ち寄って餅を食べたが、代金を求めてもお金を持っていない。殿様は城へ取りに来るようにと告げ、小袖を引きちぎって渡した◆小袖の家紋を見て本物だと知った娘は大変なことをしたと、死を覚悟して城へ。殿様は代金を払い、親孝行な娘に褒美を与えたという。この話が由来とされる「小袖餅」は郷土菓子として今に伝わる◆孝行も現代の話となると、深刻な問題が隠れている。家族の世話をする18歳未満の子どもは「ヤングケアラー」と呼ばれる。その支援に向け、国が初めて実態調査を行い、家族の世話をしている中学生は約17人に1人、高校生は24人に1人いたことが分かった◆家の手伝い程度なら褒めてやればいいが、病気や障害のある親、幼いきょうだい、介護が必要な祖父母らの世話をするとなれば心身の負担は大きい。学校を休んだり、進学を断念したりする生徒もいるが、「家庭内の問題だから」と独りで抱え込み、表面化しにくいという◆殿様のように褒美を与え、美談で済ませるわけにはいかない。「めでたし、めでたし」とするには社会の問題として捉え、支える仕組みが必要になる。初の調査を出発点にしたい。(知)

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