朝、新聞を広げて「おくやみ欄」に目を通す。働き盛りの人が亡くなっていると「まだ子どもさんも小さいのでは」とせんない心配をし、親と同じ年齢を見つければ「元気にしてるかな。たまには顔を見せにいかなきゃ」と不孝を省みる◆佐賀で生きた人たちの終幕を伝える数行の記事。ほとんどは見ず知らずの人なのだが、遺族にはそれぞれに思いがある。意向に沿って故人の職業なども載っており、勝手にいろんな想像をしてしまう◆先月だったろうか、故人の肩書に「海苔(のり)師」とあるのを見つけた。漁業でも、ノリ養殖業でもない。高齢の男性だったが、海苔師となっているところに、仕事にかけた故人の誇りがにじみ出ているように感じた◆佐賀県沖の有明海で養殖されたノリは最終入札があり、販売枚数17億7千万枚、販売額200億4400万円で今季を終えた。18季連続の日本一はほぼ確実。ノリ産地として揺るぎない存在となっているが、それも仕事に打ち込む海苔師たちの努力のたまものだろう◆今月10日付の「読者文芸」川柳一席には〈堂々と百姓ですと胸を張る〉(佐賀市、船津丸守さん)。海苔師を名乗る人がいて、百姓の誇りを胸に刻む人がいる。炊きたての白米に、海苔を巻いての朝ごはん。佐賀暮らしの豊かで、幸せな時間はそんな仕事師たちに支えられている。(知)

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