観測史上初めて最大震度7を立て続けに記録した熊本地震から5年を迎えた。犠牲となったのは、災害関連死、後の豪雨災害を含め計276人。プレハブの仮設住宅などで生活する被災者は一時4万7千人余りだったが、今年3月末現在、418人まで減少。交通インフラも相次いで復旧し、復興へ歩みを進める。東日本大震災と同じように、この地震から浮かび上がった教訓をあらためて学びたい。

 熊本地震では、熊本市や益城町などで住宅約4万3千棟が全半壊、避難者も最大で19万人を超えた。5年が経過して、多くの被災者は仮設住宅を出て、再建した自宅や災害公営住宅で暮らす。県は生活再建が進んだとして3月末で義援金の受け付けを終えたが、新たな住まいに移った高齢者らの孤立や孤独の防止という心のケアが残る課題と言える。

 この地震の特徴は、大きく二つ挙げられる。第一に、2016年4月14日夜の「前震」に続き、16日未明に「本震」が襲った点だ。建物倒壊などで命を落とした直接死は前震で9人、本震で計50人に拡大。最初の激震後に、避難先から自宅に戻り倒壊に巻き込まれた例もあった。

 そして、もう一つ見逃せないのが、関連死の比率の高さだ。熊本、大分両県の犠牲者のうち、関連死は221人に上る。さらに2夜連続の激しい揺れへの恐怖から、車中泊を選択した被災者も多く、狭い車内で長時間過ごすことによるエコノミークラス症候群を発症する人も続出した。

 関連死をできるだけ防ぐには、どんな避難生活を送っていたのかなど、実態を詳細に調査・検証することが不可欠だ。それを他の自治体も情報として共有し、「一人も取り残さない」ために必要なサポート体制を事前に構築しておく必要があるだろう。

 同時に、災害時に車中泊やテント泊など避難所を避ける被災者への対応も課題だ。新型コロナウイルスの感染拡大によって、今後こうしたケースが増えていく可能性は十分予想される。避難所の感染症対策やプライバシーへの配慮を徹底する取り組みはもちろんだが、行政の目が行き渡りにくい車中泊といったそれ以外の避難者を的確に把握し、支援物資を届け、体調管理ができるような方策も、“平時”に練っておくべきだ。

 熊本地震発生5年を前に、益城町で大地震の被災自治体の首長らが参加するパネルディスカッションが開かれた。「実際を想定した防災訓練が防災力向上につながる」(益城町の西村博則町長)、「山間地のコミュニティー再生が今の課題だ」(18年北海道地震が起きた厚真町の宮坂尚市朗町長)、「災害が起きた時、自分に置き換えて(対応を)考えてほしい」(東日本大震災の宮城県女川町の須田善明町長)…。実体験に基づく提言は参考になる。

 活断層があちこちに走る日本列島では、この地域に強い地震はない、自分は安全だ、という根拠なき甘い先入観は禁物だ。激しい揺れが連続したのも、実際に熊本で発生したのだから、もはや「まさか」とは言えないだろう。考え得る最悪の事態を前提にした備えを、自治体も、住民ももう一度意識したい。「想定外」を可能な限り排除することが、防災・減災の基本である。(共同通信・橋詰邦弘)

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