特別報道写真集『平成28年熊本地震』を開いている。熊本日日新聞社が編集した地震発生から2週間の記録である◆毛布で身をくるみ、道路に座り込む女性、避難所で身を寄せ合う高齢者、校庭に椅子を並べて作った「カミ パン 水 SOS」の文字-。道路や鉄道は分断され、シンボルともいえる熊本城も石垣が無残に崩れ落ちている。ページを繰ると、当時の恐怖が呼び起こされる◆熊本地震は14日の「前震」、16日の「本震」と続き、最大震度7を記録した。佐賀県でも震度5強。深夜にスマートフォンから警報音が鳴り響き、経験のない不安に襲われた。あの夜から5年を迎える◆熊本県では関連死を含めて273人が亡くなり、4万3千棟を超える住宅が全・半壊した。公共機関や産業関連など被害総額は3兆7850億円とされる。この5年で、崩落した阿蘇大橋は「新阿蘇大橋」として開通、熊本城の天守閣も修復が終わった。復旧・復興は着実に進んでいる◆一方で、被災状況はそれぞれに違い、どれだけ復興しても癒やされない思いを抱き続ける人はいるだろう。「節目」として、言葉を連ねるにはどこかためらいもある。それでも、あの日、あのときを忘れないために記録を見直し、記憶を呼び覚ましたい。写真集は本震の日まで机上に置いて書棚に戻すことにする。(知)

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