「連ドラは録画に替えて、ずっと中継を見たよ」。また1週間と、少し重たい気分の週初め。ゴルフに興味を示したこともない同僚が明るく話しかけてきた。米オーガスタで開かれた男子ゴルフのマスターズ・トーナメントで、松山英樹選手が日本人初のメジャー覇者となった歴史的な朝である◆この大会は1934年、アマチュアの名選手として知られたボビー・ジョーンズ氏らによって創設された。ジョーンズ氏は「いつか幸運が訪れることを期待して努力を続け、ボールを打ち続けなさい」との言葉を残している。快挙の日まで、松山選手は途方もない数のボールを打ってきただろう。そして、幸運は訪れた◆観客は総立ちになって拍手を送った。「朝からずっと緊張していた。最後まで緊張しっぱなしで終わった。僕が勝ったことによって日本人が変わっていくんじゃないかな」。ゴルフとは無縁の者からまで期待される緊張と重圧は、どれほどだったか◆それを見事にはねのけた。まねができないからすごいのは分かっているが、コロナ禍で閉塞感が漂う中、多くの日本人に「自分も何かやれそう」という思いを届けてくれたのは確かである◆「グリーンジャケット」に袖を通し、高く両手を広げた松山選手。その雄姿は声援を送った人たちの胸に、録画のようにしっかりと残された。(知)

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