てんこ盛りの竹崎カニに目を丸くする=2020年11月、藤津郡太良町の「漁師の館」

大盛りの竹崎ガニ=藤津郡太良町の「漁師の館」

唐津のスーパーで購入したツガニ

唐津市のヨットハーバーで釣り上げたタコ

太良町の安東浩太郎さんが作ったブランドアスパラガス「森のアスパラ」

唐津で釣って屋台で塩ゆでにしたタコ

釣り上げたタコを手にする中川淳一郎さん

 東京から唐津に移住したネットニュース編集者・ライターの中川淳一郎さん(47)による新連載コラム「佐賀『なんもなか』の真実」が、スタートします。県民の「佐賀はなんもなか」というフレーズに戸惑いつつ、佐賀で出会った「いろいろ」の魅力を探り、「なんもなか」の真実をつづります。初回は佐賀の食材をテーマに実相に迫ります。毎月第2日曜日に掲載します。

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 はじめまして。元日の本紙1面で「脱東京、人混みからの解放」と紹介していただいた中川淳一郎と申します。昨年11月に激務だった東京から唐津市に引っ越し、今はほどほどに文筆業を営んでいます。

 さて、本コラム「佐賀『なんもなか』の真実」に込めたタイトルですが、これは「週刊新潮」の担当編集者(佐賀出身)に唐津引っ越しを伝えた時の反応に端を発しています。訝(いぶか)しそうな顔をしながら「なんもなかとでしょ?」と言ったのです。この言葉はこちらに来てからも何度も言われ、毎度「へっ?」と戸惑ったものです。私のような47年の人生のほとんどを東京で過ごした者からすれば「いろいろあるじゃん!」と思います。

 佐賀市の大隈重信記念館の江口直明館長と話した時も含め、頻繁に聞いたのが「佐賀の人は自信がないし、目立とうとしない」という発言です。

 そうはいっても江口館長は「大隈さんは実績が多過ぎるから代表的な実績を言いづらい」「明治維新の代表は西郷隆盛・坂本龍馬・大隈重信でいい」「本当は『肥薩長土』でいい」と言葉の端々に自信を見せていました。

 これらの発言については、多くの佐賀県民が「確かに……」と納得するかもしれませんが、他のこととなると佐賀県民および出身者はとにかく「なんもなか」と本気で思っているか謙遜している節があります。しかし、外からの目だと「けっこうあるよ!」を当連載では綴(つづ)っていきます。

 第1回は、「食材」についてです。佐賀に引っ越すことを東京の人々に伝えたところ、ほぼ全員の知識が「佐賀といえば呼子のイカでしょ」止まりでした。時々「佐賀牛」を挙げる人もいたのですが、結局ここ止まり。恥ずかしながら私もこの二つしか知らなかった。

 しかし、実際に来てみるとなんなのコレ! 列挙します。竹崎カニ・カキ/伊万里牛/にじゅうまる/さがほのか/いちごさん。他にもその美味さに驚いたのがアスパラガス、ブリ、サザエ、春菊、シイタケ、不知火、ツガニなど盛りだくさん。あげくの果てには鯨が普通にスーパーに売っていますし、飲み屋に行くと地元の漁師さんが「持ってきたよ~!」なんて言ってちゃっちゃっと魚を捌(さば)いてくれる。私も先日タコを釣ったので唐津の屋台に持って行ったら店主が塩ゆでしてくれ、「うまかよ」と人生初の「カニ味噌(みそ)」ならぬ「タコ味噌」を食べました!

 一方、東京の食材に目を向けると「浅草のり」がありますが、佐賀県民からすれば「あのぉ、それ、有明海産ですから」と言いたくなるはず。ところで、「トウキョウX」ってご存じですか? 東京のブランド豚です。おいしいですが、生産量が少ない。私の地元・立川の名産は「うど」ですが、無理矢理これをパイにしたりラーメンの具にしたりしている。決して豊富ではありません。

 食材の豊かさにおいて、「いろいろあり過ぎる」が佐賀の実態ではないでしょうか。「でも東京の交通網はすごい……」などと謙虚な皆さんは言いたくなるかもしれませんが、そこらへんについてはまた今度。(ネットニュース編集者・中川淳一郎)

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 次回は5月9日に掲載します。


 ■なかがわ・じゅんいちろう 1973年、東京都生まれ。一橋大卒。博報堂で企業PR業務に携わり、2001年に退社。ライター、雑誌やネットニュースの編集者として活動。「セミリタイア」を宣言し、2020年11月、唐津市に移住した。『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『恥ずかしい人たち』など著書多数。

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