真剣な表情で子どもたちと指導対局する吉岡薫九段=佐賀市駅前中央の日本棋院佐賀中央支部

 囲碁棋士の吉岡薫九段(61)=神埼市神埼町=が、41年間の現役生活を終えて帰郷した。名古屋を拠点にプロとして盤上の戦いに挑む傍ら、12人の後進プロを育てた日本トップクラスの名伯楽。新天地となる故郷・佐賀で「囲碁の魅力を伝え、プロを目指す子どもたちの力になりたい」と指導に専念する。

 17歳で囲碁評論家の故・安永一氏の内弟子として大阪に移り、20歳でプロになった。プロ候補生として研さんを積んだ日本棋院中部総本部(名古屋市)に所属し、2013年に八段昇格、現役引退に伴い九段となった。

 プロ入り後、取った弟子は国内外の23人で、半数以上がプロになった。中部総本部所属のプロ棋士は現在、5人に1人が門下生。NHKの囲碁番組でも活躍する一番弟子の下島陽平八段(42)=長野県出身=は12歳で弟子入りし、住み込みの約4年間で400回以上の指導対局を受けた。「弟子と対局する師匠が少ない時代によく打ってもらった。楽しく夢中で打てば、おのずと上達するという考え方で、大らかな指導だった」と感謝する。

 指導では自身の棋風は伝授せず、敗戦につながった一手のみを指摘し、精進を促した。「碁盤にはその人の個性が出る。上から考えを押し付けて、若い人の個性・人間性をつぶしてはならない」と流儀を語る。

 神埼に住む高齢の両親の世話のため、2019年末に引退・帰郷を決意した。最後の公式戦は今年2月、下島八段が棋譜を作成する記録係をサプライズで務めるなど多くの門下生が見守る中、有終の美を飾った。

 この4月から日本棋院佐賀中央支部(佐賀市駅前中央)の代表となり、県内外の小中学生らを指導、自宅ではインターネット対局で遠方の子どもたちにアドバイスを送っている。指導者一筋の環境を整えた今、有望な子どもたちを集めて合宿を行う夢を描き、「佐賀をはじめ、九州から囲碁界を席巻する人材を送り出したい」と意欲を燃やす。(武田和也)

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