名札を外して登校する小学生。県警からの要請もあり、4月から実施する学校もある

 学校の外では名前札を外して―。佐賀県警が3月末に県教育委員会などに行った要請に関し、佐賀新聞「こちら さがS編集局」(こちさが)で意見募集したところ、犯罪被害を防ぐ視点から賛同する意見が目立った。一方で、名前札が子どもを助ける側面を指摘する声や地域ぐるみの議論を求める意見も。新年度が本格的にスタートし、県内の教育委員会や学校現場では対応や検討を始めている。

 こちさがでは4~7日、県警の要請に関する意見を募った。鹿島市の女性(42)は「娘の友達が下校中、知らない男に名前を呼ばれ話し掛けられたことがあった」と打ち明け、「中学生の娘の名前札は制服に縫い付けるタイプ。早く改善してほしい」と訴えるなど、賛成意見が多かった。

 一方で名前札のメリットも寄せられた。「子どもが帰り道が分からなくなったとき、上級生が家まで連れてきてくれた」(46歳女性・佐賀市)、「体調が悪くなった子どもの保護者に連絡できた」(62歳男性・鳥栖市)。武雄市の女性(42)は防犯上、名札を外すことに賛成しつつ、事故などを念頭に「身元が分かるよう、ランドセルの内側など表に見えない部分に、個人の情報を書く必要はある」と指摘する。

▽一律に「外す」

 県西部のある小学校は、要請に先んじて昨秋、名前札は学校に置いて帰るよう運用を変えた。近隣で起こった児童の盗撮被害を受け、校長同士の情報交換から自治体内の全校が同様の対応をした。校長は「反対意見は来ておらず、問題なく運用できている」と話す。

 佐賀市内のある小学校では今回の要請を受け、登下校時は名前札を着けないよう全校児童に指導し、保護者にも連絡した。これまでは外す申し出があった場合は個別に許可していたが、一律に「外す」と決めた。

 一方でほかの市町教委からは「まずは各学校の実情や保護者の考え、地域の声も聞きたい」という意見も。安全ピンを扱い慣れない低学年や、制服に縫い付けるタイプが多い中学生への対応に悩む声もあった。

▽安全な地域を

 佐賀市交通安全指導員の相澤浩さん(77)=同市八戸溝=が毎朝児童の登校を見守る通学路では、開成、神野、新栄の3校の児童が入り交じる。「普段から名前札で名前と学校を覚えて声掛けしている。いつもの時間帯に姿を見せない児童がいれば、学校や保護者に連絡もする」

 相澤さんと共に見守り活動に当たる公民館長の丸山博明さん(71)は「名前札をなくせば、子どもと地域の大人の関係を薄めることにならないか」と不安をのぞかせる。相澤さんは「端的に言えば名前札は着けない方がいいが、大事なのは安全な地域をつくること。まずは関係者と議論し方向性を探ってはどうか」と提案した。(志垣直哉)

 

名前隠す工夫できる

 〈日本こどもの安全教育総合研究所・宮田美恵子代表の話〉通学路の防犯では、子どもの名前が分からないことは大切だ。名前を呼ばれ、親の知人をかたられると、子どもの警戒感は薄まりやすい。名前札を裏返して見えなくする器具もある。持ち物の名前も、書く場所や持ち方で隠す工夫はできる。

 子どもが1人でいる時の危険として、事故や災害の想定も不可欠だ。とっさに名前を言えなかったり保護者と連絡が取れなかったりしても、血液型やアレルギーの情報は必要になる。

 最低限の必要事項から名前札を着ける意味を改めて考え、普段どうやって見られないようにするか、議論することが大事だ。

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