雄のマウンテンゴリラが胸をたたく「ドラミング」は、体の大きさを示すための行為-。ドイツの研究チームがそんな仮説を科学誌に発表したという外信記事が昨日の国際面に載っていた◆胸をたたく音の周波数などを測定すると、体が大きいゴリラが出す音は小さいゴリラよりも著しく低音だった。音の高低によって姿が見えない密林でも体の大きさが認識でき、雌は音の情報で連れ合いになりそうな雄を見つけているのではないかと指摘している◆ウホウホと力を示すゴリラを想像しながら、詩人の吉野弘さんのエッセーが思い浮かんだ。狭い道で人がすれ違うとき、どちらからともなく道を譲りあう。それが二人対一人になると、二人連れは何となく強気に振る舞い、道を譲るという構えを失いやすいと◆多くの人はそうではないだろうが、うなずいてしまうところがある。国際社会をみても、米中の覇権争いは激しく、仲間を増やそうと周囲に手を伸ばす。政治力、軍事力、経済力と、胸をたたいて力を誇示しあっているように映る◆吉野さんは二人連れの振る舞いは社会の万般に潜み、気づかれないことが多いと指摘する。力があるのは悪いことではないが、意識的に抑制しなければ譲りあいの構えを失う。誇示するような力は持ち合わせないとしても、胸にとどめておきたい戒めである。(知)

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