参院の長野選挙区補欠選挙と広島選挙区再選挙が告示された。昨年9月の菅義偉首相就任後、初の国政選挙である。地域の課題への取り組み姿勢も投票先の判断基準になるが、半年余りの「菅政治」に対する評価が最大の争点と言えよう。

 今秋までに行われる衆院選より早く、法案審議を抱えた国会開会中に意思表示できる機会だ。新型コロナウイルス感染症は収束せず不自由な生活が続いているが、期日前投票などを利用して貴重な1票を行使してほしい。

 長野補選は立憲民主党の羽田雄一郎元国土交通相が死去したことによる。広島再選挙は2019年参院選に自民党公認で立候補した河井案里前議員が選挙買収で有罪となり、当選無効とされたことに伴う。2選挙とも与野党が候補者を立てて、対決する構図になった。自民党が候補擁立を見送った13日告示の衆院北海道2区補選とともに、25日に投開票される。

 菅首相は官房長官として支えた安倍晋三前首相が体調不良で辞任したため、急きょ後を継いだ。有権者の審判を一度も受けていない首相が問われるのは、第一にコロナ対策だろう。

 政府は今年1月、安倍前政権時に続いて2回目となる緊急事態宣言を11都府県に発令。3月下旬までに順次解除したが、感染拡大に歯止めがかからず、今月5日には宣言に準ずる「まん延防止等重点措置」を宮城、大阪、兵庫の3府県に初適用した。東京都も適用を政府に要請している。医療が逼迫(ひっぱく)すれば、私権の制限につながる同措置の対象地域がさらに追加される可能性は否定できない。

 ワクチン接種を含む感染症の抑止策、病床確保など医療体制の整備、暮らしや事業支援は十分だったか。選挙戦に合わせ政府、与党の施策を点検したい。

 その際には野党の提案との比較が欠かせない。立民は感染抑制に徹底的に取り組んだ上で、経済活動を再開させる「ゼロコロナ戦略」を発表している。実現性がある有効な対策なのか吟味が必要だ。

 菅政権が「政治とカネ」問題をどこまで深刻に受け止めているかも見極めたい。広島再選挙の要因になっただけでなく、衆院北海道2区補選も首相に近いとされた元農相が鶏卵汚職事件で議員辞職したため行われる。

 前参院議員や夫で公判中の元法相、元農相の3人とも離党はしたが、疑惑が問題視されるまで自民党に所属していた。

 にもかかわらず二階俊博幹事長は元法相が衆院議員辞職を表明した際、「他山の石にしないといけない」と述べた。そうした人ごとのような認識で自浄能力に期待できるかどうか。菅首相や自民党は選挙戦を通じ、再発防止を誓うべきだろう。

 総務省官僚への接待疑惑、日本学術会議の会員任命拒否問題を巡る国会審議も思い起こし、投票に際しては政府、与党と野党のどちらの主張に理があるか改めて考えたい。

 次期衆院選の前哨戦である今回の選挙結果は、首相の政権運営や与野党の国会対応に影響するのは間違いない。ほかの選挙区の有権者も、選挙戦の行方を注視してほしい。

 コロナ感染が続く中での選挙である。与野党は候補者の訴えが有権者にきちんと届く工夫を凝らす一方、選挙管理委員会は安心、安全な投票環境の整備に努めなくてはならない。(共同通信・鈴木博之)

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