半田矢作の根の家

 鏡山の南麓、半田(はだ)の矢作(やはぎ)には、NPO法人唐津Switchが運営する移住希望者のためのシェアハウス「根の家」があります。かつて農業を営んでいた小才(こさい)家は築150年ほど。幾度か改築された主屋の座敷の床下には蚕が飼われていた跡があります。昔の面影を色濃く残した納屋では牛や豚、鶏を飼っていました。裏手の八龍神社へ向かえば、緩やかな坂に美しい石垣と屋並がのどかに続きます。

 矢作では年4回は村人総出で鏡山の山頂から南麓までの草刈りを行っています。古来、手間を惜しまない集落の人の心が思われます。小才さんが幼い頃は、長男が生まれた家に葛(かずら)をまいて引手をつけた大きな石を子どもらが持ってきて土を搗(つ)く行事がありました。お盆には村人が当番の家に集まり鯉こくなどのごちそうをいただく習慣も長く残っています。

 矢作とは矢を作っていた地につけられる地名です。小才家の本家は小西家。古くは武士であったという言い伝えとともに本家に残されていた鎧(よろい)や兜(かぶと)は市に寄贈されています。

 鏡地区では半田川と宇木川の平地を囲む山裾だけでも20を超える支石墓や古墳が密集しています。小才家の農地の整備事業でも遺物が出てきたとか。末盧国の中心地とも目される地。稲作が伝わってきた最初期には稲作が行われたことでしょう。国史跡葉山尻支石墓のある丘から振り返ると、鏡山と半田の集落がのびやかに広がって、山懐に守られているように見えました。

文・菊池典子

絵・菊池郁夫

(NPOからつヘリテージ機構)

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