新型コロナウイルスの感染拡大と長期化によりドメスティックバイオレンス(DV)が深刻さを増す中、内閣府の専門調査会がDV防止法による通報や保護命令の対象を身体的暴力に限らず、精神的、性的暴力などにも拡大するべきだと法改正を求める報告書をまとめた。政府は今後、有識者検討会議を設置し、詳細な制度設計を進める。

 現在の防止法はDVを巡り▽発見者が、全国各地の配偶者暴力相談支援センターや警察に通報する努力義務▽被害者の申し立てにより加害者に、つきまといの禁止や住居からの退去を命じる裁判所の保護命令―を定めている。ただ、いずれも対象を殴る蹴るなどの身体的暴力に限定している。

 20年前の制定時、夫婦間の問題に公的機関が介入するのは極力避けるべきだとの考え方から、暴言を吐いたり無視したりする精神的暴力や、性行為や中絶を強要するといった性的暴力は対象外となった。しかしコロナ下で在宅時間が長くなり、状況は悪化の一途をたどっている。支援センターや警察への相談は後を絶たず、「コロナうつ」という言葉も耳にする。

 加害者と一緒にいることが多くなったため、被害者は誰かに相談するのも難しく、被害が見えにくくなった。政府は被害の実態をしっかり見極め、生活費を渡さないような経済的暴力の扱いや保護命令違反の厳罰化なども含め、制度の抜本的改正を急ぐ必要がある。

 精神的、性的暴力について専門調査会は先月下旬公表した報告書で「法益侵害の程度、被害者に与えるダメージは身体的暴力と変わらず、むしろ長期間にわたり持続することで回復をより困難にさせる」とし「身体的な暴力と同様に扱うべきだ」と結論付けている。

 現行制度のままでは法律上、精神的暴力などを軽んじることになりかねない。影響は子どもにも及ぶ。千葉県野田市で2019年1月に起きた小4女児虐待死で市の検証報告書は精神的暴力について「母が子どもを守れなくなり、外から見えやすい身体的DVより、子どもにとって危険度は増大する」と指摘した。

 警察庁によると、20年に全国の警察に寄せられたDVの相談は8万2643件。前年より436件増え、01年の防止法施行以降で過去最多となった。被害者の76・4%が女性だった。一方、相談支援センターが対応した相談は19年度に11万9276件に上り、こちらも過去最多を更新した。

 そうした中、裁判所による保護命令は14年度の2528件をピークに減少傾向にあり、18年度は1700件にとどまった。被害者の申し立てに基づく保護命令は接近や電話の禁止、住居からの退去などがあり、違反に1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるが、被害者を守る制度として十分機能していないと専門家はみる。

 19年の改正で発令の要件に「生命などに対する脅迫」が追加されたとはいえ、身体的暴力を基本とする点は変わらず、利用しづらい。接近禁止と退去の期間がそれぞれ6カ月、2カ月と短いのもネックになっている。

 またストーカー規制法の禁止命令違反は2年以下の懲役または200万円以下の罰金だが、それに比べ保護命令違反は軽いとの批判も根強い。被害者の安全を守るために何ができるか、積極的な検討が求められよう。

(共同通信・堤秀司)

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