きのうの小欄で星野富弘さんの詩『幸せ』の一節を引いた。〈辛(つら)いという字がある/もう少しで/幸せに/なれそうな字である〉。新型コロナで辛い日々が続く中、もう少しで幸せになれそうと思えるように道筋を示すのは政治の責任である、と◆そんな拙稿の上に載った若い二人のうれし涙が政治よりも一足先に、「辛」から「幸」へと後押しをしてくれた。白血病から復活、東京五輪代表に決まった競泳の池江璃花子さん(20)と、父・古賀稔彦さん(三養基郡みやき町出身)を亡くしたばかりで、柔道の世界選手権代表の座をつかんだ古賀玄暉さん(22)である◆池江さんは2024年のパリ五輪を目標に再起を図っていたが、自身も驚く復活劇だった。「自分が勝てるのはずっと先のことだと思っていた。すごく辛くてしんどくても、努力は必ず報われるんだなと思った。今すごく幸せ」。涙ながらのコメントに、常人にはうかがい知れない努力を思う◆古賀さんは、父のひつぎに「結果を出して恩返しします」とつづった手紙を入れて大会に臨んだ。「平成の三四郎」の才能を継いだ天才肌。伸び悩みもあったが、尊敬する父の早世で「今まで以上に覚悟が強まった」という◆二人は「辛い」という字の先にある「幸せ」を見失わずに辛抱した。うれし涙に励まされ、もう一踏ん張り。(知)

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