皇位の安定継承を巡って、政府の有識者会議で議論が始まった。報道各社の世論調査では「女性・女系天皇」や、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」の創設に賛成する声が広がりを見せている。一方、自民党内などの保守派は「男系維持」を訴え、女系天皇につながる可能性のある女性宮家に反対。意見集約は難航しそうだ。

 上皇さまの天皇退位から2年近くがたつ。現在、次世代の皇位継承資格者は秋篠宮さまの長男悠仁さま1人のみで、皇統維持が危ぶまれる状況にある。しかし政府は皇位継承策の本格的な検討を先送りしてきた。女性宮家などの議論に踏み込めば、保守派から反発を招く恐れがあるからだ。

 ようやく検討に着手したが、あまりに遅い。安倍晋三前首相は4年前に天皇退位を巡る有識者会議のメンバーらと会食した際、継承策を決める時期について「40年先でいいんじゃないか」と発言。悠仁さまがいるし、男系維持と女系天皇容認の意見は交わらないからと語り、あきれられたという。危機感がなさすぎると言わざるを得ない。

 憲法1条は「象徴天皇制」を定める。その存続は国の根幹に関わる。検討に費やせる時間はそれほど残っていないと考えた方がいい。たとえ、国論を二分する論争になっても、政府はこれ以上議論を先送りせず、今度こそ具体的な皇位継承策にめどを付けるべきだ。

 皇室典範は、天皇や皇族以外と結婚した女性皇族は皇籍を離れると規定。公務などを報じられることの多い天皇陛下の長女愛子さまや秋篠宮さまの長女眞子さま、次女佳子さまは近い将来、結婚して皇族ではなくなる可能性があり、悠仁さまに皇位継承と皇室活動の重責が集中しかねない。

 2005年、当時の小泉純一郎首相の下で有識者会議は女性・女系天皇容認を打ち出し、政府は皇室典範改正に動いたが、翌年の悠仁さま誕生で立ち消えになった。12年には民主党政権が女性宮家創設を皇族減少対策として示したものの、直後の衆院選で大敗。安倍前政権の登場以降、いずれの議論も進んでいない。

 歴史上、女性天皇は10代8人いる。全て父方が天皇の血筋につながる男系。母方で天皇につながる女系天皇はいない。

 皇室典範には「男系の男子」が皇位を継承するとあり、保守派は男系男子による皇位継承が原則と強調。女性・女系天皇につながるとして女性宮家に反対し、とりわけ女系天皇については「日本の伝統を破壊する」と強く異論を唱えている。

 自民党などで有力視されているのが、結婚後の女性皇族に「皇女」の尊称を贈り、皇籍離脱後も皇室活動への協力を委嘱する案だ。だが公務の担い手不足をある程度解消できても、皇位の安定継承にはつながらない。

 終戦後に皇籍を離脱した旧宮家から男系男子の子孫を皇室に迎える案もあるが、70年以上も民間にいる旧宮家から人を招いたとしても、国民に皇族として受け入れられるか、疑問を拭えない。

 政府にとっては皇女制度の創設が最も無難と映るかもしれないが、その場しのぎの策にしかならない。20年の共同通信世論調査では女性天皇賛成が85%、女系天皇賛成は79%に上っている。ただし女性皇族の結婚が相次げば、選択肢は細っていく。それを踏まえ、議論を尽くす必要がある。(共同通信・堤秀司)

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