19世紀半ば、クリミア戦争で傷病兵の看護に赴いたナイチンゲールは、野戦病院の血の通っていない劣悪な医療体制を目の当たりにした。患者の食事も、決められた肉の量を骨まで含めた重さで量っていた。運が悪いと骨ばかりで肉にありつけない。これでは回復はむずかしいはずである◆「白衣の天使」を嘆かせたように、見かけでは実際の中身が分からないことがある。たとえば晩酌の缶チューハイ。近ごろは10%前後の高いアルコール度数が人気で、「1本だけ」のつもりでもアルコール摂取量は増える。つい飲み過ぎることがないよう、酒類業界はこれまで「%」や「度」で表示してきたアルコールの強さを、「量」でも分かるよう見直す方針とか◆買い物に出かけて、心くすぐるお得な値札も案外くせ者だった。レジで消費税が上乗せされると、いつの間にか値ごろ感が消えてしまう。来月1日から税込みの「総額表示」が義務づけられ、支払額がひと目で分かれば、もうこんな気分を味わうこともなくなるだろう◆ただ逆に、総額表示になれば自分がどれだけ消費税を負担しているか実感しづらい。コロナ禍で消費が冷え込むいま、義務化が進められるのは、将来の税率引き上げに向けた地ならしだったりして◆値札の中身は骨…いや税金ばかり、なんて時代は想像したくないのだが。(桑)

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