演劇ユニット「斜陽motion picture sound track」による舞台「完璧な庭」の一場面(提供写真)

 佐賀の演劇ユニット「斜陽motion picture sound track」(穂村和彦代表)は3月上旬に佐賀市八戸の旧枝梅酒造で上演した舞台「完璧な庭」の映像をウェブ配信している。繊細かつ粗暴な演劇的手法で“表現”を肯定する。

 絵画的美しさを見せる舞台装置と映像を背景に、箱庭をキーワードとした舞台が展開する。鷹巣将弥さんと吉光志穂さん、西正さんの3人が、松下莉久さん演じる男性に物語を編むよう要求する。

 他人の脳内に放り込まれたように、表現や物語を考察する抽象的なやり取りが続く。耳をつんざくような書物を床に投げ出す音、畳み掛けられる観念的なせりふの数々が飽和状態に達する時、荒々しく出現する演劇的展開によって観客の胸に唐突な歓喜が広がる。

 コロナ禍であらゆる表現活動が不自由を強いられる中、同作も上演を2度延期した。自己表現をステージに限らず広義に捉え、人との交流や余暇の過ごし方などにまで広げてみれば、現代を生きる私たち全員がコロナ禍で表現活動を制限された当事者といえる。

 松下さん演じる人物は「生きているだけで何かを作っている」と訴える。表現は時に人を傷つける。コロナ禍で私たちのフィールドは箱庭のように小さくなった。それでも同作は、当事者たる私たちのありのままの生き方を肯定する。

 同ユニットはこれまでベテラン役者陣を多く配してきたが、今回は4人の出演者のうち、のびのびとした演技を見せる20代の若手を3人起用。穂村代表は「若い血が入らないと芝居が衰退していくし、若手から学ぶものも多い」と話す。次回作については「今作よりさらに物語性のある作品になる」と展望を語る。

 同作は県が主催するオンライン上の文化芸術祭「LiveS Beyond(ライブス・ビヨンド)」の支援を受けて上演した。(花木芙美)

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