北朝鮮が新型と称する短距離弾道ミサイルの発射実験を行った。バイデン米政権による北朝鮮政策の見直しが最終段階に入っていることをにらんだ挑発行為だ。
 バイデン大統領は明白な国連決議違反として国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会の開催を要請した。北朝鮮は反発するだろうが、これ以上、挑発をエスカレートさせてはならない。
 北朝鮮の狙いは三つある。
 一つは、ほぼまとまりつつあるとされるバイデン政権の北朝鮮政策の見直し作業に影響を与えようとする目的だ。強硬姿勢を誇示することによって譲歩を引き出そうとする思惑がある。これは金正日(キムジョンイル)時代から一貫して北朝鮮が見せてきた瀬戸際戦術の一環だろう。
 もう一つは、米韓、日韓の同盟関係への揺さぶりだ。ブリンケン米国務長官とオースティン国防長官が日韓を歴訪し、同盟関係強化を再確認した直後のタイミングを狙い、短距離の弾道ミサイルを発射することによって、日韓を米との同盟関係から切り離そうとする目的があろう。
 実際に韓国は今回のミサイル発射に際し、「弾道ミサイルかどうか慎重に分析する必要がある」として、慎重な見方を崩さず、対応が最も遅かった。
 4月のソウル、釜山の市長選挙、来年の大統領選といった政治日程を考慮し、南北交流の再開と北朝鮮政策での成果を追い風にしたい文在寅(ムンジェイン)政権は、北朝鮮の挑発行為をできるだけ抑制的に対応したいとの思惑がうかがえる。日米と韓国の温度差が如実に表れている。
 しかし、今回の弾道ミサイルの射程を北朝鮮は600キロと主張している。主張通りなら、韓国全域と日本列島の一部が射程に入る。韓国は北朝鮮のミサイルにより、人質に取られているようなものだ。
 日本も菅義偉首相が「無条件での金正恩(キムジョンウン)総書記との首脳会談」を訴えている。この無条件という前提に、核やミサイル開発を進めている北朝鮮の出方を不問に付すのか、との疑念が米側から指摘されている。今回のミサイル発射は日米韓のこうした足並みの乱れを誘おうとするものだろう。
 三つ目は、バイデン政権の出方を探る目的だ。トランプ政権では、短距離弾道ミサイルについては「米本土を脅かさない」との理由で、事実上、問題視しなかった。バイデン政権になり、トランプ政権との違いがあるのかどうかを探ろうとする狙いがあろう。
 そして、そのバイデン大統領は25日(日本時間26日)に開いた就任後、初の記者会見で北朝鮮の今回のミサイル発射は「国連安保理の決議違反」と非難し、「緊張を高めることを選ぶなら対抗措置を講じる」と警告した。トランプ政権とは明確に異なる対応だ。
 こうしたバイデン政権の出方を受けて、気になるのは北朝鮮の次の一手だ。
 昨年と今年の軍事パレードで公開した新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)や、昨年の軍事パレードでお披露目した大型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射に踏み切ることも懸念される。
 北朝鮮は挑発行為のエスカレートを避け、バイデン政権との対話に応じるべきだ。挑発行為で得られるものは何もないのだ。(共同通信・磐村和哉)

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