オスプレイ配備計画の

 佐賀空港への自衛隊輸送機オスプレイ配備計画を巡り、九州防衛局が駐屯地候補地の地権者が所属する県有明海漁協南川副支所(佐賀市川副町)で3日間にわたり開いた地区ごとの説明会が26日、終わった。土地の買収額や振興策を提示した事実上の地権者説明会。佐賀県も漁協本所も、防衛省本省でさえ全容を知らされていなかった。誰が、何の目的でひそかに開催しようとしたのか。関係者の不信感が渦巻く説明会の実態を追った。

 九州防衛局はノリ漁期が終わる4月下旬以降に地権者説明会を開く方向で南川副、早津江、大詫間、広江の4支所と調整を進めていた。県も漁協もこの説明会が「配備実現に向けた分水嶺(ぶんすいれい)になる」との認識で一致していた。それだけに、関係機関との事前調整もなく買収額まで提示した今回の地区説明会に驚きが広がった。

 

▽1時間計11回

 南川副支所の説明会は地区ごとに役員が出席を呼び掛け、1回約1時間で計11回開かれた。初日の24日、九州防衛局の広瀬律子局長は土地の買収額として「1平方メートル当たり上限4350円」を示した。同支所が所有する候補地の33ヘクタールで総額約14億円に上る。しかし、初日の説明会が報道によって明るみとなり、2日目以降は買収額の提示を控えたとみられる。

 関係者によると、4350円は不動産鑑定の評価を踏まえた正式な数字ではないが、近くの土地の取引価格を参考に算出した上限額という。正式な地権者説明会の開催前に、内密に事実上の説明会を開き、買収額まで提示したことに、防衛省本省さえも困惑する。ある県関係国会議員は「広瀬局長は注意を受けたのだろう」と推測した。

 

▽特別な存在

 県にも漁協本所にも知らされていなかった今回の地区説明会。誰が絵を描いたのか、当事者間でも見解が食い違う。広瀬局長は「先方から少人数での意見交換会を持ちたいと言われた」とするが、南川副支所の田中浩人運営委員長は「こっちからは頼んでいない。九州防衛局から要望があった」と反論する。

 九州防衛局はあくまで正式な地権者説明会に向けた「調整の一環としての意見交換会」と強弁するが、複数の出席者は「実態は明らかな地権者説明会だった」と口をそろえる。説明会で広瀬局長は「防衛省にとって南川副は特別な存在」と訴え、振興策の説明に多くの時間を割いた。

 

▽不協和音も

 他省庁の補助率2分の1の事業と違い、「防衛省は3分の2の補助率で漁協の意向を反映した事業ができる」と強調。浸水問題を抱える漁港のかさ上げ、乾燥機や海上作業を省力化できる新型漁船の整備、公民館の改修や運動場の整備にも使えると言及したという。

 ある漁協幹部は「地権者説明会の前に根回ししたいと思ったのか、なりふり構わずだ」と批判した。南川副支所の突出ぶりに、他支所の幹部は「地権者を抱える3支所とも連携してもらわないと何のために組合で(地権者説明会を開くと)話したのか分からない」。漁協内に不協和音も聞こえ始めた。

 県関係者は九州防衛局の対応を「県に事前の話がなかったのは、何も相談することがないからだろう」と冷ややかに受け止める。「それでも県は構わないが、事業主体として関係者の信頼関係を損なわないようにしてほしい」と“勇み足”にくぎを刺した。(取材班)

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