東京電力柏崎刈羽原発で、テロ目的などの不正侵入を検知する装置の故障が放置され、侵入者を検知できない状態が長く続くというずさんな核防護対策が発覚。原子力規制委員会が同原発での核燃料の移動を禁じる事実上の運転禁止命令を出す方針を決めた。

 原子炉等規制法に違反するとして規制委がこの種の措置を命じるのは、商業炉では初という異例の事態だ。

 同原発では、1月に所員が同僚のIDカードで中央制御室に不正入室していたことが発覚したほか、完了したとしていた7号機の安全対策工事の一部が未完了だったなどの不祥事が相次いでいる。

 東日本大震災の際に事故を起こした福島第1原発でも、構内の地震計の故障が長期間、放置されていたことが発覚した。

 現在の東京電力に、多くのリスクを抱える原発を運転する資格も、困難な事故炉の廃炉を進める資格もないと言える。

 東電が原発の運転者として適格かどうかは、2017年に規制委が柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働の可否を審査した際に問題になった。

 規制委は当初、適格性を疑問視していたが、東電が「廃炉をやりきる覚悟」を文書で表明するなどした結果、適格性があるとされ、再稼働が認められた経緯がある。この「適格性」が否定されたのだから、再稼働の議論はやり直しが必要だ。

 東電が事業収入を上げながら賠償や廃炉を進めるというのが現在の仕組みだ。これを支える東電の経営計画の中で重要な位置を占める6、7号機の早期再稼働が困難となった以上、仕組み自体の見直しも必要だ。

 ただ、これを東電だけの問題だと考えるべきではない。

 電力会社のずさんな原発の安全管理は今に始まったものではない。東電福島第1原発事故を機に、彼らが原発に向かい合う姿勢は見直されたはずだった。だが、その後も、テロ対策施設の完成の遅れで三つの電力会社の原発が運転停止を迫られるなど、現在の電力会社の適格性を疑問視させる事態が続出している。

 規制委と東電によると、1月に協力企業の作業員が侵入検知設備を誤って壊したのを機に規制委が現地検査し、多数の機器に故障があったことが判明した。テロのリスクが大きい原発の安全対策にこれほど大きな欠陥があったことを長期間、見逃してきた規制委の姿勢にも構造的な問題があると考えられる。現在の安全規制の在り方の総点検も不可欠だ。

 今回の事態は、国のエネルギー政策の観点からも重大だ。50年に温室効果ガス排出量を実質的にゼロにするとの菅義偉首相の宣言以降、政府は地球温暖化対策としての原発の重要性を強調し、従来に増して積極的に活用する姿勢を表明している。現在、見直しが進む30年度の電源構成の中でも20%前後を原発に担わせる方針だが、これも危うくなってきた。

 日本の原発には、不祥事のたびに、大量の電力供給が長期間失われるという安定供給上のリスクがつきまとう。適格性に欠ける事業者が運転を続ければ、事故やテロのリスクも増える。

 今回の事態を機に、原発が抱える大きなリスクに改めて向き合い、過半の市民が支持する脱原発の実現に向けた歩みを速めるきっかけとするべきだ。(共同通信・井田徹治)

このエントリーをはてなブックマークに追加