小城市立歴史資料館では桜の季節にあわせて、藩主の庭園桜岡に関する資料を展示している。桜岡は明治に桜岡公園となり、戦後に小城公園となった。
小城藩二代直能は領内の鯖岡という場所に初代元茂に続き桜の木を植え、明暦2(1656)年に桜岡とあらためた。延宝3(1675)年、後西院(前天皇)と公家18人から桜岡を詠んだ和歌が贈られた。
(後西院詠歌)
さく花に まじる岡辺の 松の葉は いつとなきしも 色を添えつつ
花盛りの桜と常緑の松を対比させ、いつになっても変わらない気持ちを伝えている。
(直能詠歌)
言の葉の にほひにそひて 咲きつづく
花にうれしき 岡の辺のやど
においは雰囲気という意味もあり、和歌を贈られた喜びが桜岡に広がっているという気持ちが込められている。
直能は、後西院、公家18人、自身の和歌を歌集とした。「岡花二十首和歌」として展示している。
同じ年、江戸幕府お抱えの儒学者林鵞峰たちが小城周辺の風景を詠んだ漢詩集が贈られている。直能が桜岡周辺を描いた「桜岡二十景絵巻」をもとに詠まれたと考えられる。
朝廷の歌人や幕府の儒学者が和歌や漢詩の題材にした桜岡が、現在は小城公園として存続している。
花見に小城公園を訪れた際は、あわせて歴史資料館で桜岡の歴史に思いをはせてほしい。
(小城市教育委員会文化課・田久保佳寛)
※テーマ展「藩主がめでた桜岡」は4月25日まで。午前9時~午後5時、入場無料