失った歯を補い かむ力上げ 健康寿命延ばす

複数の選択肢から自分に合った治療法を

 人生100年と言われる時代。いつまでも健康で自立できる生活を送るためには、「お口の健康」を保つことが大事です。歯周病などで歯を失った場合でも、補える治療の一つが「デンタルインプラント」です。インプラント治療の特徴や手術法、ケアの仕方などを緒方歯科クリニック(佐賀市)の緒方理人院長に聞きました。

健康寿命延ばすために口腔ケア

 健康で自立できる期間を指す「健康寿命」を延ばすためには、お口の健康を保つこと(口腔ケア)が大事です。清潔に保つことで、合併症の原因となる口腔内の雑菌の繁殖を防ぐことができます。また、高齢になるとかむ力が弱くなり、低栄養や筋力低下の原因(フレイル)となります。天然歯が多く残っている人ほどフレイルの予防につながると言われています。
 しかし、年齢を重ねるほど、虫歯や歯周病などで歯を失ってしまう人も多く、その場合は義歯などを装着することでかむ力を助けます。歯を失っても放置せずに早めに対処することが大事です。

「第二の永久歯」デンタルインプラント

明るい雰囲気の院内

 歯を失った場合、義歯(入れ歯)、ブリッジ、インプラントの三つの治療方法があります。入れ歯のメリットは、自分で取り外しができるので、こまめに清掃でき清潔に保てること。デメリットは、かむ力が天然歯に比べ30~40%ほど減少することです。ブリッジは失った歯を補う人工歯とその両隣の歯にかぶせる「クラウン」が一体となったもので、人工歯が固定されるので入れ歯のように取り外す必要はなく、かむ力も強いのがメリットです。デメリットは、構造上、人工歯の隣に歯がないとできないことと、両隣の健康な歯を大きく削る必要がある点です。入れ歯とブリッジは、健康保険が適用されるので、経済的でもあります。
 インプラント治療は、決して新しい治療ではなく1952年スウェーデンのルンド大学で研究を行っていたブローネマルク教授によって骨とチタンが結合する事が発見され、1962年に本格的な人へのインプラントが行われるようになり進化を続け今日に至ります。入れ歯やブリッジに比べて最も天然歯に近く「第二の永久歯」とも言われています。失った歯の代わりに、手術であごの骨に人工の歯根(インプラント)を埋め込んで土台とし、この上に人工歯を装着します。インプラントには、人間の体に親和性があり骨と結合する性質を持つチタンを用います。人工歯を固定するので天然歯と同様、しっかりかむことができ、義歯やブリッジのように残った歯に負担をかけることもありません。デメリットは、基本的に健康保険の適用外なので、治療費が1本当たり約30万~40万円と高額なことです。また、インプラントと骨が結合するのを待たなければならないのでケースにもよりますが、治療期間は3カ月から1年ほどかかります。インプラントは人工歯をかぶせるだけではなく義歯を安定させるために利用することもあります。

あごの骨が薄くても「骨造成」手術で補強

 手術は、歯ぐきを切開してチタンを埋め込みますが、土台となるあごの骨がしっかりしていることが大前提です。あごの骨が歯周病や虫歯などが原因でやせている場合、チタンを埋め込む前に骨に厚みをつける「骨造成」手術が必要な場合もあります。骨造成手術は歯ぐきを切開して骨補填剤を注入し、硬い骨になるのを待ってインプラントを埋めるというものです。骨が生着するのには平均6カ月前後の期間がかかります。当院では、個々の骨の状態や部位によって適した術式を行います。

定期的なメンテナンスで生活の質を上げる

 インプラントはメンテナンスも大事です。インプラントをして終わりではなく、定期的なメンテナンスに通うことで、ねじの緩みを調整したり、かみ合わせなどをチェックしてお口の健康を保ってほしいと思います。
 お口の健康は、生活の質に大きく左右します。歯を失っても治療方法はありますので、それぞれのメリット、デメリットを踏まえ、かかりつけの歯科医と相談してください。場合によってはセカンドオピニオンを行い他の歯科医師の意見を聞いて、自分に合った方法を見つけてください。
 

 MEMO  手術のストレスを緩和する静脈内鎮静法

 インプラントなどの手術では、一般的に「局所麻酔」を用いますが、「削る音や振動が怖い」という人に「静脈内鎮静法」という麻酔を用いることがあります。鎮静薬を静脈に点滴することで、うとうととした状態にし、ストレスを緩和する方法です。当院では、歯科麻酔専門医が術中、患者さんの状態を管理しているので安全です。

 

緒方歯科クリニック 院長

 

 

緒方 理人(おがた・まさと

 2008年日本歯科大学生命歯学部卒、09年町田市民病院(東京都)歯科口腔外科に入局し、10年同院麻酔科研修、12年歯科口腔外科レジデント開始、15年に非常勤歯科医師として勤務後18年から現職。日本口腔外科学会認定医、日本口腔インプラント学会専門医、日本有病者歯科医療学会専門医、日本顎関節学会会員など。

 

 
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